夫の介助なしでは体を洗えなかった
2012年10月に米ケーブル局TLCで放送されたドキュメンタリー番組「Too Fat To Kill」によると、事件当時、その肥満体から身体を動かすことができなかったマイラは、2年間、ベッドの上で生活を送っていた。
身体は当然バスタブには収まらず、夫が、ベッドの上でマイラの身体を洗っていた。その時の様子について、マイラはこう語っている。
「2006年頃から、ベッドにいたままの状態になり、夫に身体を洗ってもらうようになりました。手にソープをつけて洗ってもらうのです。そうしないと、皮膚が裂けてしまうからです。
夫はたくさん助けてくれます。身体を洗ったり、ベッドをきれいにしてくれたり。他の人に任せると私を傷つけることになってしまうのではないかと心配し、進んで助けてくれるのです。彼は私の命です。私と彼は一心同体。彼を信じています」
事件発生から数週間後、女性医師がマイラの自宅を訪ねた。マイラが医師の診察を受けるのは1年半ぶりだった。その医師は当時のマイラの状態を「Too Fat To Kill」の中でこう回想している。
「マイラは死にそうでした。肺炎と肺水腫を患っていました。あの状態では1週間は生きられたかもしれませんが、医療介入しなかったら生きられなかったと思います」
太りすぎて自力で歩けず、引越し用の大型バンで移送
ブラウンは胸のレントゲン検査のためにマイラを病院に搬送することにした。しかし、搬送するのは容易ではなかった。「膝が体重を支えられないので歩くことができない、寄りかかる椅子がいる」と訴えるマイラをいったいどう動かすのか? それが大きな課題となった。
彼女は、マイラを動かした時の様子についてこう話している。
「医師を続ける中で、マイラのような人を見たことがありませんでした。マイラを動かすには10人の男性が必要だったんです。
幅が広い救急車も必要になりました。ストレッチャーに乗せることもできなかったので、直接、救急車の床に滑り込ませるようにしてマイラを乗せたのです」
マイラは2008年8月、エリセオの死に対して殺人罪で刑事訴追された。しかし、刑務所にはマイラの身体を収容するのに十分な大きさの独房がなく、適切な医療ケアを与えることも困難なことから、マイラは裁判が始まるまでGPSを装着されて自宅軟禁された。
裁判にあたっても、特別な対応がされた。マイラを家の中から出すのに壁を壊し、引越し用の大型バンで彼女を運んだため、移送費用がかかった。
法廷の幅も測定され、審理中、マイラが過ごすためのキングサイズのマットレス探しも行われた。そんな前代未聞の状況が生じたことについて、メディアは「フリーク・ショー(見世物小屋)のようだ」と揶揄した。
