李が言う。
「知り合いの豚舎で働いていた外国人は週末になるとソウルまで出かけていって、外泊してくることもたびたびだと困っていました。それでも働いてくれる人は他にいませんから、ソウルまで行くためのバイクを買ってくれと言われた時はやむなく購入したそうです。
外国人労働者も若い世代が増えたので、都会に出かけたい気持ちも分かりますがね。だから、きちんと働いてくれる人は本当にありがたい存在なのです」
韓国への出稼ぎは「宝くじ」並みの人気
スタートした2004年、EPSの採用枠は2万5000人だった。08年のリーマンショック後に一時的に落ち込んだものの、それ以降12年からは5万人台を維持してきた。大幅に広がったのは、ここ2年の間のことだ。コロナ禍で外国人労働者が減少し、現場から労働力不足の声が上がると、韓国政府は、22年に採用枠を1万人ほど増加し、6.9万人とした。23年には12万人と2倍に増やし、24年には16万5000人と一気に拡大している。
韓国は、労働者を送り出す各国で根強い人気を誇っている。
25年5月、ベトナムで行われたEPSのための韓国語能力試験には、定員8000人に対し、2万2800人が集まった(「毎日経済新聞」2025年5月7日)。この報道によれば、人気の理由は、やはり高い賃金だ。韓国の農村に行くと自国内で肉体労働をするよりも4倍の給料が受け取れると噂された。また、ブローカーが介在しないEPSは、労働者自身の負担が少ないことも魅力になっているという。農業などの現場で繁忙期のみ働く「季節労働者」についても、応募者は22年から、2年で5倍(約2100人)とこちらも大きく増えている。
カンボジアでも「韓国に行くのは宝くじに当たるようなもの」といわれるほど人気があるという。報じた韓国経済新聞(2024年5月12日)は、もともとは日本に行こうと日本語を勉強していた20歳の若者のこんな話を紹介していた。
「兄が日本で働いていたため、幼い頃から日本語を勉強していたが、目標を韓国に替えたのは家族からの説得でした。日本で働く兄の月収は700ドル(約10万円)でしたが、韓国の農家で働いた叔父の月収は1500ドル(約21万円)でした」
