障害者の“性行為”を体当たりで表現

 特筆すべきは、同作が「健常者と障害者のラブストーリー」ではなく、「青春恋愛映画の金字塔」として今に伝わっていること。映画やドラマにおいて障害者は往々にして、ピュアで、真面目で、優しく健気といった風に美化されがちだ。だが、ジョゼはそうじゃない。ひねくれていて口が悪く、自分の思い通りにならなければ駄々をこねたり、恒夫と性行為に及ぶために自ら服を脱いだりもする。

 そのステレオタイプではないキャラクター設定と、池脇から滲み出る「生活感」が、ジョゼを障害者ではなく、一人の人間として立ち上がらせていた。ゆえに、終盤で描かれるジョゼと恒夫の気持ちのすれ違いが個別の特殊なものではなく、どんなカップルにも起こり得るものとして共感を呼んだのだろう。

「生活感」は女優・池脇千鶴を語る上で重要な一つのワードであり、彼女が演じる人物はこの世のどこかに存在していそうなリアリティを持っている。

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池脇千鶴 ©時事通信社

“中年女性らしい”体型&顔つきが話題に

 池脇が9年ぶりに連続ドラマの主演を務めたことで話題になった、2021年放送『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)。アパレルの物流倉庫で働く40歳の独身女性・新を演じた池脇は、ジョゼの頃と比較すると体型がふっくらに。特殊メイクでクマやたるみを作り、猫背気味で役に臨んだ。

 普段、映画やドラマを観ていると「冴えない設定なのに美人じゃん!」とツッコミを入れたくなることもあるが、池脇演じる新は本当にどこにでもいそうな雰囲気で驚かされたものだ。

 序盤でしっかりと役作りをしているからこそ、その後、新が平均年齢70歳の高齢バーで最年少ホステスとなり、自信をつけて輝く40代女性に変身する過程がより魅力的に視聴者の目に映る。また池脇は伝説のママ・ジルバも1人2役で演じているのだが、ジルバとして登場する時はさすがの美しさとオーラを放っていた。