高市早苗氏への期待と不安。自民党の新総裁となり、次期首相も濃厚となった人物を各紙はどう伝えたか。

 産経新聞の櫻井よしこ氏コラムは「快挙」とし、「これで自民党、そして日本再生の第一歩を踏み出せる」と興奮。人事については「すべて石破氏の真逆を行くのがよい。石破氏は自らの貧しい人脈から、人望も実力も不足の人々を重用し、国益を損ねた」と十八番の石破ディス。

高市早苗氏 ©JMPA

これで思い出すのは第二次安倍政権だ

 一方で興味深かったのは日刊スポーツ・中山知子記者による次の一節だ。

ADVERTISEMENT

《党内では、極右政党出身ながら就任後はタカ派的発言を弱めて現実路線を歩むイタリアの女性首相、メローニ氏が、高市氏の念頭にあるのではという見方もある。》(10月5日)

 なるほどなぁ。自民党ではリベラル派と言われた石破首相は持論を封印し「党内融和」に努めたが保守派には相手にされなかった。逆にとびっきりの右派である高市氏が持論を封印して政権運営をすれば現実路線という評価が待っている?

 これで思い出すのは第二次安倍政権だ。第一次政権時は「美しい国」を掲げるなど本来の理念を打ち出したが1年で終わった。第二次政権ではまず経済政策を掲げたことで国民の注目を集めた。安倍氏を慕う高市氏はその手法を考えているかもしれない。

 ではあらためて決選投票を振り返ろう。高市氏が小泉進次郎氏に勝ったのは当然と思えた。小泉氏は決選投票直前の演説で感謝とお礼のようなことしか言えなかったからだ。

 対する高市氏は最大の勝負どころとして臨み、原稿を読み上げる練習を繰り返したという(朝日新聞10月5日)。思えば昨年の決選投票で高市氏は石破氏に敗れた。制限時間を超えて話し続けてスタッフに指摘されるなど、ちぐはぐな印象を与えた。「最後のスピーチで石破さんに決めた議員は多いと思う。高市さんはもっと準備すべきだった」(東京新聞2024年9月27日)という党内の声もあった。高市氏は周到な準備で1年越しにリベンジしたのだ。全国の党員票も多く集めて「民意」をひきつけた。