「クールジャパン」「観光立国」を始めとする国家的文化政策を筆頭に、書籍・雑誌・ムックからテレビ・ラジオ番組、人材育成セミナーなど、さまざまな媒体を介して社会的に広がっていった「日本スゴイ」コンテンツ。
それがどのような機能をはたしているのか、具体的なエピソードを早川タダノリさんが読み解いた話題の著書『「日本スゴイ」の時代』(朝日新書)から一部を抜粋して紹介する。(全3回の3回目/最初から読む)
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「なぜ日本は世界中から愛されているのか」で売れたムック
他方、書籍・雑誌など出版の分野では、時期的にテレビよりもはるかに先行しているだけでなく、その「日本スゴイ」のあらわれかたも多様である。
その中でテレビの「日本スゴイ」番組と同じ作り方をしているものとして、単テーマのムック『JAPAN CLASS』(東邦出版、2014年—2019年)、『JAPAN 外国人が大絶賛した!すごいニッポン100』(宝島社、2015年—)の2シリーズを代表的なものとして挙げることができる。いずれも「秋葉原」「自動販売機」「ウォシュレット」「京都」「アニメ」などなど、外国人旅行者が驚嘆した日本の「スゴイ」ものをランダムに取り上げ、それに対する海外からのコメントと合わせて紹介してゆくという構成が採用されている。
ほぼ見開き2頁ごとに話題が変わっていき、章立てもなければ体系的構成もないため、取り上げられた小ネタ間の関連を推測しつつ真面目に読むとかなりアタマが疲れるしろものだ。しかも海外からのコメントに出典が付されていないので、どこから拾ってきたものなのかさっぱりわからないという面妖さも共通している。けれどもテーマは「なぜ日本は世界中から愛されているのか」で一貫しているのである。
