「攻撃的態度を加速していった高専教員Aの教育者の行動としての問題も見逃すことは出来ない」
「会計監査」に教員A自身は参加しなかったが、陽向さんにとっては、文化祭の時に自分を強く非難した教員Aに「ポイント不正利用疑惑」で調査を受けることになったのは強いストレスになったであろうことが想像される。
報告書では、陽向さんを調査する学生たちの態度のキツさを、「ギリギリまで監査委員とTeams(コミュニケーションツールの一種)でやりとりしているんですけど、その口調は、あたかも刑事事件の捜査のような詰め方だった」と指摘。
同時に「まだまだ大人の保護が必要な状況の中で、過大な責任を負わされてしまった。そして学生同士で完璧にエスカレートしていった」と、学校・教員側の管理責任を指摘している。
第三者調査委員会の報告書では、教員Aが主導した学生会室への立ち入りや学生同士での監査を促すなどの対応について、「攻撃的態度を加速していった高専教員Aの教育者の行動としての問題も見逃すことは出来ない」と断言したうえで、「高専教員A自体があくまで黒子に徹して前に出なかったことが、監査担当の学生たちの暴走を制御できない事態を招いた」と指導方法の不適切さを指摘した。
そして、教員Aの発言や学生会長からの降任を促す行為を「不適切な指導の典型」と非難している。
調査委員会の委員長を務めた野村武司・東京経済大学教授も、「学生会費の最終的な責任は学校にあります。学生間の監査は必要ではなかったのではないか。ポイント利用についても、学校側が陽向くんを呼んで教えてもらえばよかった。その上で利用方法を指導すればよかったのではないか」と、重ねて指導の不適切さを強調している。
陽向さん自身の私的な流用も、結局は確認されなかった。
報告書の発表と同日10月5日に行われた記者会見では、東京高専を運営する高専機構の谷口功理事長が「1人の若い尊い命を断つことを防ぐことができなかった。痛恨の極みです」と謝罪し、樋口校長は「報告書は重要なものと捉えている」とした上で、専門家を含めた委員会を設置し、関係した教員を処分するかどうかを含めて検討するという。
会見に駆けつけた遺族は、「ようやく公表されたという意味では評価しているが、提言の中で教員の不適切な指導についての対応が十分ではない」と嘆きの表情を見せていた。

