東京高専の学生会では、陽向さんが会長になる以前から会計業務の不備が課題になっており、使途不明金や余剰金に加え、「学生会費で備品などを購入した際のポイント」の扱いが曖昧な状況が継続的に存在した。
その問題の話を別の学生から聞いた教員Aは、領収書を確認して陽向さんが会長だった2019年12月のレシート20枚のポイント欄がマスキングされていることを発見。それがきっかけで「陽向さんもポイントを私的に利用していたのでないか」と問題視するようになった。
ポイントの利用法について陽向さんに別の教員がヒアリングすると「私的なものはく、学生会活動に使うものを購入した」と話していたが、学生会にはポイントについての規則がなく、ルールの盲点にはなっていた。マスキングされていたポイント部分は、2~3万円分であることが予想された。
そして教員Aは会計の監査を担当する学生たちに対して、陽向さんを対象に「会計監査」を行うように伝えた。
「会計監査」担当の学生は10月2日の20時35分に、陽向さんに「収支報告書について聞きたいことがあるので、5日以内に時間を作って欲しい」という内容のメッセージを送り、「中程度の急ぎ案件ですので早めにお願いします」と添えている。
その日の22時21分には陽向さんが「5日以内に対面は難しい」と返事をしたため、監査委員の学生2人は教員Aに報告した上で、19年12月の物品購入などについて質問を続けた。
その後、5日の午前8時から陽向さん立ち合いのもとで学生会室で領収書などについて調査することを約束した。
昼になっても起きてこない陽向さんを心配して父が部屋に入ると…
しかし「会計監査」が予定されていた10月5日当日、午後1時ごろになっても陽向さんは2階の自室から出てこなかった。心配になった父親の正行さん(55)が陽向さんの部屋のドアを開けると、陽向さんは自ら命を絶っていた。
机の上にはプリントされた遺書が置いてあり、「私の中で負担となっているのは学生会」と書かれ、末尾には手書きの「生きるって難しい」という文字が並んでいた。その隣には、厳しい孤児院からの脱出を夢見る子どもたちが主人公のマンガ『約束のネバーランド』の最終巻が置かれていた。
「直前の行動を振り返っても、家の中で思い当たる節はありません。パソコンの画面にLINEが開いてあったのですが、やりとりをみて何かがおかしいと思った。メモ帳も開ける状態だったし、遺書もあったんです。10月5日はテストの1週間前でもあります。なぜそんな日にわざわざ調査するのか疑問に思いました」(父・正行さん)


