不良、ツッパリ…荒れた地元で見出した「音楽」への憧れ

――そういう家庭環境にいると、自立心も育ちますか。

鼠先輩 それはもう、中学生の頃から岡山を出たいなと思ってた。当時バンドブームで、 中学2年生の時、ブルーハーツが社会への反抗心を歌う姿に惹かれた。不良やツッパリ、校内暴力が毎日日本のどこかで起こっている時代でしたね。

 今は知らないけど、昔の岡山なんてルールは破ることがかっこいいみたいな風潮が蔓延していて、治安も悪い。剃り込み入れて変形ズボン、上着は短ランか長ランで、俺は長ラン派。それが中高生の「普通」だったんだよ。

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――それで、バンドにハマって?

鼠先輩 僕はバンド。バイクにハマって暴走族になるヤツもたくさんいたけど、ブンブンうるさくして人に迷惑かけるより、音で奏でた方が俺は好きだったな。

バンド活動中の17歳の鼠先輩 本人提供

――高校へは行くんですよね。

鼠先輩 中学校の先生が「高校には行け」っていうから、1週間だけ勉強して県立高校に行った。それが超底辺なのよ。名前が書けないやつもいるし、英語もABCから。俺だって中3までアルファベット書けなかったから、レベル的には“合ってる”んだけどさ。

 そういえば「鼠先輩」の 由来がWikipediaに書いてあるけど、あれは嘘。当時バイト先の先輩と、面白い言葉をつくって遊んでたらできただけなの。「鼠」なんて漢字、俺みたいなのに一生書けないよ。書きたくない。書ける? どの線が繋がってたっけ、繋がってなかったっけって、わからなくない?

©石川啓次/文藝春秋

――でも、せっかく入った高校も中退しますね。

鼠先輩 だって本当にすごく悪い学校だったもん。どれぐらい悪いかって、3年生までに9割いなくなる。荒れに荒れていて、先生が登校拒否してましたからね。

 そんな高校1年生の時にNHKアマチュアバンドコンテスト『BSヤングバトル』の岡山大会で優勝しちゃってから、これはいけるぞ! と勘違いが始まって、さっさと中退。俺はバンドで生きていくぞと思って、30歳までそれが続いちゃうという。