35歳で離婚

 ある日、取引先の飲み会に出て、朝帰りをした。

「あんた、毎日こんな時間に帰ってきて! 浮気してるんでしょ」

「なにを言うてんねん。仕事や仕事!」

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 もともと口ゲンカは達者な方だ。それでもその日の妻の本気さは違った。包丁を持ち出し、パンチが飛んできた。まともにくらって、鼻血が流れた。

「なにをするねん。目を覚ませ」と、誠が妻の体を動けないようにすると、3人の子どもたちに「やめて」と止められた。長男が連絡したのか警察が来た。近所の知り合いのおばちゃんが止めにくるほどの騒ぎだった。

 夫婦ゲンカがおさまったのは、早朝だったが、その日も誠は出社した。仕事を終えて夜中に帰宅すると、自宅はもぬけの空。

 誠の荷物と手配の間に合わなかった大型の家電製品だけが残っていた。

 妻からは「書類にサインをして」という連絡があり、七夕の前日にケンカをして9月には離婚届が役所に出されていた。

 誠は35歳で離婚をした。

 悪いことは重なるものだ、上司と意見が合わず、誠はまた会社を辞める。

 最後に社長と話をした。

「これから先は月に15万円稼ぐのがやっとの人間と、月に50万円以上稼げるような人間と両極化していくと思う。篠田もここにいれば、50万円どころか、70万、80万円の見込みがあるで。お前はどうするんや?」

「僕は15万円をとります。でもその15万円で終わる人間じゃないんで」

 いよいよ、誠の人生を決める事件が起こる。