俳優の永作博美の主演映画『あきらめません!』(垣谷美雨原作、大九明子脚本・監督)の撮影が、先月(2025年9月)より今月後半までの予定で、石川県の能美市や小松市を中心に進められている。永作演じるヒロインが、都会から移住した夫の郷里で、地域社会の閉鎖性を思い知ったことから、市議会議員に立候補するというストーリーだ。

10月14日に誕生日を迎えた永作博美 ©時事通信社

10年前にも石川県が舞台の映画に出演した永作

 永作は10年ほど前にも石川県内で出演映画『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』(全国公開は2015年)を撮っている。台湾出身の姜秀瓊(チアン・ショウチョン)監督によるこの映画は、同じ石川でも奥能登の珠洲市が舞台で、永作演じる主人公・吉田岬はある理由からやはり移住して来て、海辺に焙煎コーヒー店を開く。

映画『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』(2015年全国公開)

 公開当時、ともに主演を務めた佐々木希とのインタビューで、撮影のため1ヵ月以上この地に滞在した印象として、《珠洲市は過疎化が進んでいて人口が少ないけど、ほとんどの人が意思を持ってそこで生活している。だからみなさん強くて温かみがあるんだと感じました。(中略)やさしさのあるこの土地に岬が居場所を見つけていく気持ちはわかる気がする》と語った(『with』2015年4月号)。

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 言うまでもなく、珠洲市は昨年(2024年)元日の能登半島地震、さらに同年9月の能登半島豪雨と、立て続けに大きな被害を受けた。地震発生から3ヵ月が経とうとしていた3月末には、東京の大妻女子大学の卒業生や学生らが復興支援のため『さいはてにて』の上映会を開き、永作もその趣旨に賛同して上映後に登壇すると、《石川の雰囲気とか力強さを受け取ってくれるとありがたい》と挨拶したという(「東京新聞デジタル」2024年4月10日配信)。

「わかったんです。なにもしなくていいんだって」

『さいはてにて』の岬のモデルとなったのは、奥能登に実在する「二三味(にざみ)珈琲shop舟小屋」のオーナーだ。永作は役作りのため、この店を訪れている。

《役に入る前は、焙煎している間のなにもしない一人の時間を、どう演じればいいのか不安がありました。でも、実際に奥能登の店まで行って、二三味さんのお仕事をずっと見ていてわかったんです。なにもしなくていいんだって。そこに理由はいらないんですよね》(『家の光』2015年4月号)

石川県珠洲市を訪問(永作博美のインスタグラムより)

「なにもしなくていい」と気づいたところに、俳優・永作博美の真髄があるようにも思える。

 その永作はきょう10月14日、55歳の誕生日を迎えた。いまではどんな役もこなす演技派として知られる。しかし、もともと俳優志望だったわけではない。芸能界ではアイドルとしてキャリアをスタートしたものの、それも成り行きによるところが大きかった。