『世にも奇妙な物語』『週末婚』クセのある役が多かったドラマ
当初、ドラマではクセのある役が多く、あるインタビューでは印象的な作品として『世にも奇妙な物語』の一作「罰ゲーム」(フジテレビ、1994年)を挙げている。サイコロを振って出た目が一番少ない人には、自分の体を激しく痛めつける罰ゲームが待っているという設定で、彼女は罰ゲームのたび痛そうな顔はしているのに、ちょっと笑っているという不気味な役どころであった。それを見た友人からは「本当に怖かった」と言われたという(『PHPスペシャル』1999年2月号)。
30歳前後には、『週末婚』(TBS、1999年)で姉とドロドロの攻防を繰り広げる妹役、『Pure Soul~君が僕を忘れても~』(日本テレビ、2001年)ではアルツハイマー病の妻役を熱演し、しだいに俳優として評価が高まっていく。舞台でもナイロン100℃公演『下北ビートニクス』(1996年)で初主演、『水物語』(1997年)では一人芝居に初挑戦した。
映画はちょっと遅れて、30代に入って出演した黒沢清監督の『ドッペルゲンガー』(2003年)が最初である。役所広司演じる主人公に好意を寄せる女性という役どころであったが、台本を読んで「さっぱりわからない女性」像への興味から「これは体を通すしかないな」と思い、出演を決めたという(『キネマ旬報』前掲号)。それまで「この人はこういう人」と決めて演じていた彼女にとって、頭で考えるのではなく感じるままに、現場の空気に任せることにしたのは大きな変化だった。
カメラを止めない演出に「松山ケンイチくんと遊ぼうと思いました」
そんなふうに映画と向き合う永作は、監督からすれば色々と引き出しがいがあるのだろう、独特の演出をする人も目立つ。『人のセックスを笑うな』(2008年)の井口奈己監督は、39歳の美術講師・ユリ役の永作と20歳下の生徒・みるめ役の松山ケンイチのラブシーンで延々とカメラを回し、なかなかカットをかけなかった。それに対し永作は監督の意図をすぐ理解し、堂々と受け入れてみせた。
《セリフがあるところと、セリフがないところの変わり目が、観ている人に分かるのは嫌だし、その前後で(本編に)使えないことをやってもしょうがない。同じ状態をキープするには最初から遊んでるしかないんです。だからまず、困ったら松山ケンイチくん(みるめ)と遊ぼうと思いました》(『キネマ旬報』2008年1月下旬号)
これには“遊ばれた”側の松山はたじたじだったようで、《カメラを止めないからこそ、ふたりで延々と本当に喋っていた記憶が強くて、台本にも描かれていない二人の本当の時間が生まれた気がする。結ばれて、眠りこけて、起きたユリがみるめのパーカを着て、ぴょんぴょん飛び跳ねる場面なんて全部永作さんのアドリブで、僕はもうそれを見ているのが嬉しくて、照れちゃって、どうしようもなかった。実際にああいうことを恋人にされたら、ふたりの距離は縮まるしかないですよね》と、映画公開時に彼女との対談で打ち明けている(『CREA』2007年12月号)。

