「ヒヤリハットがあったかどうか」あえて聞くといい

また、日常業務についてこんな誘導をしてみるのも効果的なようだ。

「説明会で園長ばかりにしゃべらせるのではなく、現場の保育士に質問するようにするのも良いかと思います。そのなかで『最近のヒヤリハットはありますか?』と聞いてみましょう。日々の保育現場で、ヒヤリハットが全くない、ということはあり得ません。ヒヤリハットが数多く出る保育園は、『そんなに危ないのか?』と思われるかもしれませんが、逆です。それだけ些細なことにも気が付ける文化がある、ということです」

現場の保育士たちも事故をなくすために日々努力をしているが、それがなくなることは「ない」と近藤さんは断じる。今後の保育現場においては、事故をなくす目標も重要である一方で、こんな視点が見過ごされかねないのだという。

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「保育現場のミスは子どもの生命という最も尊いものを奪う危険性があり、絶対に起きてはいけないものです。しかしながら、その一つひとつのミスは小さなものだったりするところが、怖いわけです。もう二度と生命を落とすような事故は起きてほしくないと願うと同時に、結果として亡くならないにしても、似たようなミスはこれからもどこかで起きるだろうと私は懸念しています」

“事務的なチェック”にとらわれない園を選んでほしい

「現場でチェックすべき項目だけが増えていけば、まるでミルフィーユのように、1枚1枚の業務はそう負担ではなくても、全体として現場を圧迫します。本来、子どもとコミュニケーションを取るべき現場職員が、注意義務に過剰に縛られてしまうとそれが難しくなることもまた問題です」

現場を知り尽くす元研究者の視点で、近藤さんはさまざまな切り口から提言を行う。子どもの生命を守るために、保育園に何を求めるか。些細な違和感を見過ごさない、ロジカルな視点で職員たちと対峙(たいじ)してみると、これまで見えてこなかったものが見えてくるかもしれない。