このように、保護者が何を不適切保育とするかは、恣意(しい)的な部分が強いともいえます。もちろん、すべての保護者が保育園に不当なレッテルと貼っているはずもなく、正当な訴えもあります。大切なことは、それらを可視化できる設備があることです」
この“可視化できる設備”こそ、保育園見学の際に見逃してはいけない注目ポイントだという。
「園庭に見守りカメラが設置してあるかどうかは、一定の基準になり得ます。まず単純に、園児同士のトラブルや保育士からの不適切保育があったかどうかを検証しやすいわけです。また保育園も社会的インフラの1つであることを考えれば、侵入者による犯罪行為があった場合にも、警察に証拠を提出しやすいといえます。子どもを守るために具体的な方法を選択している点において、信用に値すると私は思います」
“死角をなくす姿勢”の保育園は期待していい
ニュースになるような不適切保育がおこなわれている場合には証拠映像を検証することができる。だが他にも、こんな使い方があるという。
「保護者の保育園に対する信頼はとても大切です。しかし園児が必ずしも本当のことだけを話すとは限りません。なかには、保護者からの気を引くために、事実と違うことを口走ってしまう子もいるんです。弊法人の施設でも、過去に『先生にぶたれた』『先生に無理やり給食を口に突っ込まれた』という訴えをした園児の保護者から相談を受けた経験があります。そうした行き違いをなくすためにも、見守りカメラは重要な役割を果たすのではないかと私は考えます」
利便性は理解できる一方で、子どもをカメラで“見守り”することに一定の抵抗を示す保護者もいるのではないか。それに対して、近藤さんは極めて論理的に話す。
「もちろん、そうした抵抗感を示す人はいます。ただ、何よりも重要なことは安全管理も含めた子どもの保育にリソースを割けるかという点です。保育士ひとりで見渡せる範囲にはどうしても限界がありますし、不適切保育や保育事故などのほとんどは死角で発生します。そうした死角をなくす方向に舵を切れる保育園は、時代の流れに合致する部分が多いのではないかと思います」