実際に保護者が入園を検討するとき、施設見学をすることもあるが、過度な“見学主義”に対して近藤さんは首を傾げる。
保育園をいくつも見学する余裕はない
「自治体によっては、入園希望の施設を5つまで記入できる場合があります。待機児童問題以降、保活(保育園探し、入園活動)などと呼ばれて激化しているからかもしれません。ただ、率直に言って本当にそんなに見るのだろうか、とは思います。そもそも子どもを保育園に入れるご家庭は、共働きであるなど、ご家庭で長時間みるのが難しいさまざまな理由があるはずです。そうした忙しい人たちに対して、5つ希望を出させて比較させること自体、不親切だと私は感じるんです」
とはいえ保護者の目線に立てば、不適切保育が行われている施設にわが子を預けたくないのは言うまでもない。見学を重ねる気持ちも理解できよう。だが近藤さんは「保育における適切/不適切の基準は、時代によって異なる」と指摘する。
「不朽の名作『おしいれのぼうけん』は、子どもが先生に叱られて押入れに入れられるところから話が始まるわけですが、現代では不適切保育でしょう。時代の流れにくわえて、保護者個人の背景――たとえば夫婦関係がうまくいっていない、産後うつの問題を抱えている――がある場合も多く、あるいは保護者と保育士の関係性によっても大きく異なります。
現代において“殴る、蹴る、逆さ吊りにする”などの行為はいかなる理由があっても不適切保育であるといえますが、実際のところ、保育士のなかにそれを行う人間が多いかといわれれば、かなり少数の異分子だと言わざるを得ません。基本的に、保育士になる人は若いときからこの職業を目指して勉強した、熱心な人たちです」
「見守りカメラ」があるかどうかをチェックする
実際、近藤さんの運営する園においても、“不適切保育”の烙印(らくいん)を押して詰め寄る保護者が過去にいたと話す。
「保護者とともに遠足へ行き、広い公園につきました。保護者と子どもの時間を設けたのですが、そこで保護者同士が話し込んでしまい、そのすきに子どもが高い場所から落ちて骨折してしまったことがあったのです。『不適切保育ではないか』と激怒されていましたが、当日の状況や事故には保険が下りることなどを説明すると、納得されました。