事態を察知した父は、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ
騒ぎを聞きつけて軽ワゴンを飛ばしてきた青木の父・A氏(57)が近隣男性に声をかける。
「何があったの?」
男性はA氏に、息子は散弾銃や迷彩服を持っているかと尋ねた。A氏は事態を察知し、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ――。
午後8時半頃、自宅にいた母のB子さん(57)が脱出。同居していた伯母(B子さんの姉)も、青木に促され、午前零時過ぎに家を出た。青木が父の説得により投降、身柄を確保されたのは、午前4時半過ぎ。惨劇から半日が過ぎていた。
「被疑者は、日課の散歩コースとして自宅前を通る女性2人に『悪口を言われていると思った』と語っている。警察官を撃ったのは『射殺されると思ったから』と供述。散弾ではなく、大型獣に使う殺傷能力の高いスラッグ弾が使用されていた」(捜査関係者)
親族の1人が、憔悴しきった様子でこう打ち明ける。
「どうすれば被害者のご遺族に赦してもらえるのでしょうか。お好きにしてくださいと、政憲を差し出したいくらいです……」
◇
実家は地域に何軒もある青木家の総本家
長野県北部に位置し、唱歌「故郷(ふるさと)」の原風景としても知られる中野市。青木家は13代続く農家で、青木はその嫡男だった。
「地域に何軒もある青木家の総本家。戦時中、予科練にいた祖父にも市議の話があったものの、結局、農協の理事を務めた。20年ほど前に他界したが、孫の政憲が生まれた時は『跡取りができた』と、本当に喜んでいた」(祖父の友人)
地元では“名家の長男”として知られていた青木だが、一家を知る地区住民の1人はこう振り返る。
「成長するにつれ、政憲が人付き合いの苦手な子だというのは、みんな分かった。周囲の期待を1人で背負い込んで、圧し潰されていたのかもしれません――」
美男美女で知られていた両親
父のA氏は、大学卒業後、県内の農薬会社に勤務しつつ、農家を兼業。中野市議会議員を務めていた。20代半ばで結婚したB子さんは、高校の同級生だった。
「2人は高2くらいから付き合っていました。どちらもスラっとしていて、美男美女。交際を隠すこともなく、よく並んで歩いていたので、すぐに噂になりました」(高校の同級生)
温泉街のある同県山ノ内町出身のB子さんは、青木家とは対照的な火宅に育つ。
「B子の父親も町議で議長を務めた人物でしたが、元は共産党系で、戦前、弾圧された経験もあるそうです。一方で、外に女を何人も作って子供を産ませていました」(地元住民)
