東京湾岸エリアに屹立するタワーマンション群。その一角にあるドラッグストアや公園にもう寝る時間であるはずの子どもの集団が。塾経営者・講師の矢野耕平さんは「子どもと関わろうとしない自分本位の親が年々増加している」という――。

※本稿は、矢野耕平『ネオ・ネグレクト 外注される子どもたち』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/kanzilyou ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

【ネオ・ネグレクト〈名〉 衣食住に満ち足りた生活をしていても、親がわが子を直視することを忌避したり、わが子に興味関心を抱けなかったりする状態のこと。新しい育児放棄。[――の行為に及ぶ]】

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夜の公園に「放牧」される子どもたち

東京湾岸エリアの某所にある大規模タワーマンション群の近くに一軒のドラッグストアがある。夜遅い21時くらいにこの店の中で「たむろ」している小学生がよく見られるという。

その光景を目撃した母親は語る。

「小学生の集団が店内でうろうろしている。女の子たちは数人固まって化粧品コーナーに置かれている試供品を使って『お化粧ごっこ』に興じているのです。その中にわたしの知り合いのお嬢さんがいたので、『あれ、ママはどうしたの?』と声をかけたのですよね。そしたら、『近くのお店にいる』と。なるほど、ドラッグストアのすぐそばには居酒屋があるのですね。そこで、ドラッグストアにたむろしている小学生たちの親が集まって飲んでいるのですよ。ネオ・ネグレクトの意味を伺ってこの話が思い浮かんだのですが……」

この母親は一瞬ことばを詰まらせたあと、わたしにこう告げた。

「そう考えると、わたしもネオ・ネグレクトに手を染めてしまっているのかもしれない……」

母親が語るにはこういうことだ。

この母親もそうだが、タワマンで仲の良いファミリー層は一様に共働きだという。そしてわが子が幼児のころからの付き合いだ。その母親たちが週末に近隣のファミレスに集まって、夕方から食事を兼ねて2時間程度お酒を飲むという。

そのとき子どもたちはどうしているのか。