NISAの非課税保有限度額は1800万円なので、この若者が50年間、月3万円の積み立てを続けたとすると、投資元本(1800万円)に対して資産は9倍の1億6300万円、利益は1億4500万円に(理論上は)なる。──表1でわかるように、月額3万円の積み立てでも、運用期間が長期になるにしたがって利益は急速に増えていく。これが複利のパワーだ。

表1

「NISA以外で株式投資をする理由はあるのか」

 ところが課税口座だと、この利益に対して2900万円もの税金を払わなければならない。さらには、株式やファンドの配当・分配金にも税金がかかるが、NISAではこれも非課税なので、全額を再投資に回すことができる。そう考えれば、NISAが断然有利な制度だとわかるだろう。

 もちろんNISAには、1年間に非課税で投資できる上限(成長投資枠と合わせて360万円まで)が決まっているとか、信用取引で投資にレバレッジをかけたり、空売りができないとか、損失が出たときに他の譲渡益と損益通算できないなどの制約がある。だがこれらはかなりの資産を運用するセミプロ投資家にとっては重要でも、老後のために資産形成したいふつうのひとたち(あなた)にとってさしたる意味はないだろう。

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 そうなると、「NISA以外で株式投資をする理由はあるのか」という単純な疑問が生まれる。そのシンプルな答えは「なにもない」だ。

 余裕資金はすべてNISAに月々3万円の積み立てでも、NISAなら50年で3000万円ちかい税金が非課税になる。譲渡益や配当・分配金に税金を払いながら、信用取引や空売りでそれ以上の利益を出せるひともいるかもしれないが、運用益に20%(分離課税)から50%超(所得税・住民税の最高税率)の税がかかる以上、ほとんどの投資家はどんなに頑張っても税コストを埋めあわせることはできないだろう。

「投資の収益に対して税金を払わなくていい」というNISAのメリットはあまりに大きいので、課税口座での株式投資だけでなく、不動産や金の現物取引など、それ以外の投資をすべて無意味にしてしまう。今後は、「余裕のある資金はすべてNISAで運用する」というのが資産形成の王道になるだろう。