2024年に拡充された少額投資非課税制度(NISA)をどのように使っていいのか分からない。口座を開設したけれど商品が多すぎて何から手を付ければよいのか分からない。『新・臆病者のための株入門』より一部抜粋し、正しいNISAの使い方をご紹介する。(全3回の3回目/1回目を読む2回目を読む

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成長投資枠は無視してよい

 NISAには「つみたて投資枠(年間投資枠120万円)」のほかに「成長投資枠(同240万円)」があり併用が可能だ。非課税保有限度枠は1800万円なので、成長投資枠とつみたて投資枠を合わせて年間360万円を投資するなら5年で枠はいっぱいになる。

 ただし、保有資産を売却すると翌年の投資枠を空けることができる。月10万円ずつ積み立てて15年でNISAの投資枠(1800万円)を使い切るのではなく、成長投資枠を合わせて月30万円ずつ積み立て、5年で投資を終えるという考え方もあるだろう。

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 成長投資枠は、変動率の大きな(ハイリスク・ハイリターンの)個別株を購入し、利益が出たら売却する短期の取引に向いているが、ここでは投資の素人でも気軽にできるNISA利用術として、成長投資枠は無視して積み立てだけを行なうことを提案したい。安く買った株を高く売れば利益が出るが、それが簡単にできるなら株式投資家はみな大富豪になっているはずだ。金融市場は複雑系で、どんな天才も未来の株価を正確に予測することはできない。

 だがより重要なのは、金融商品の選択には「時間コスト」がかかることだ。巷には、財務諸表を精読したり、チャートを分析したりする「投資必勝法」が溢れている。このすべてが役に立たないとはいわないが、投資する銘柄を選択し、買い時と売り時を判断するにはかなりの時間を費さなくてはならない。

 稀少な時間資源を投資に使えば、それによって別のこと(仕事、勉強、趣味、家族・友人との交遊など)に割く時間がなくなってしまう。イーロン・マスクのような大富豪でも、1日は24時間しかない。現代社会では、やりたいこと、やらなくてはならないことがどんどん増えている。だからこそ若者は、時間をすこしでも有効に使おうと映画を1.5倍速で観て、タイパ(タイムパフォーマンス)を上げようとするのだ。

 投資が好きで銘柄研究やチャート分析が面白いのなら、それに多くの時間をかけてもよいだろう。だが金融市場の仕組みにさしたる興味も知識もないふつうのひと(あなた)が、どの株式やファンドに投資するかの判断に多くの時間資源を費やすのは無駄だ(時間をかけてもパフォーマンスが上がるわけではない)。

 そんなときは、長期に積み立てる金融商品を最初に決めてしまおう。それをクレジットカード払いにしておけば、資金を証券口座に移す手間もかからないしポイントも貯まる。

 あとはなにもする必要がないから、残った時間はすべて自由に使える。

 そんなにうまくいくのかと思うかもしれないが、幸いなことに、このあと説明するように、ファイナンス理論の原則によって、NISAの積み立てで選択するファンドは4本に絞ることができるし、そのうちどれを選んでも大きなちがいはない。

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