恩師に「すべての授業で一番を取ってきなさい」と言われ

――日本人で初めて恐竜の博士号を取得された小林先生が。そんなことがあるんですね。

田中 さっそくご挨拶に行ったら、「君のこと知ってるよ、恐竜博物館に電話したでしょ?」と。実は、外部からの電話は小林先生が担当されていたけれど、たまたま席を外していたそうなんです。

 それでもう1人の先生が親身になって答えてくださったんですが、小林先生は「君、運が良かったね。もし私が電話に出ていたら、『東大かハーバード大に行ってください』と言って、ガチャッと切っていたよ」とおっしゃっていました(笑)。

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――大学時代にはどんな生活を?

田中 友達と遊んだり、バイトをしたり、普通の大学生でした。ただ、小林先生から「僕のところで研究したいなら、すべての授業で一番を取ってきなさい」と厳しいことを言われて。それから勉強もやる気になって、全部が全部一番というわけにはいきませんでしたが、無事に大学4年生から小林先生の研究室に入ることができました。

田中康平さん ©︎佐藤亘/文藝春秋

「恐竜の卵」を研究するため、中国とカナダに留学

――研究テーマは「恐竜の卵」だったそうですね。

田中 小林先生から「中国で卵が大量に見つかっているけど、全然研究されていないから、君が研究したら?」と軽い感じで言われたんです。

 それが大学3年生の秋の話で、ちょうどその頃、中国の恐竜学者が短期の客員教授として北大にいらっしゃって。すごく仲良くなったので、翌年の春から中国へ行って、一緒に研究をさせていただきました。

――北大を卒業されてからは、カナダに留学されたとか。

田中 それもまた運が良かったんですよね。僕が学生の頃にはまだ「恐竜研究をするには留学が必要」という考えがあって、僕もずっとそう思っていました。

 そうしたら大学4年生の秋に、モンゴルの発掘調査から帰ってきた小林先生が「君、カナダはどう?」と言うんです。モンゴルで一緒に調査をしていたカナダの先生が学生を探していたらしく、「恐竜の卵の研究をしている人だし、どう?」と聞かれたので、「行きます」と(笑)。