自らデザイン・製作した義眼を装着、その自身の姿や製作の経緯を映像化して作品として発表しているアーティストのRib(リブ)さん(31)。そんなRibさんに、3回にわたりインタビュー。1本目は、そもそも義眼とはどういうものなのか、そしてRibさんが変化を望む“義眼業界”の現状についてうかがいました。(全3回の1回目/つづきを読む

Ribさん ©︎文藝春秋 撮影・細田忠

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義眼を表現に変えたアーティストRibさん

――片目を失明した著名人といえば、樹木希林さん、デヴィッド・ボウイ、この秋に始まった朝ドラ『ばけばけ』に登場するヘブンのモデルとなったラフカディオ・ハーンもそうです。そして義眼のユーザーには「おすぎとピーコ」のピーコさんがいらっしゃいます。以前どこかで耳にしたピーコさんの発言で、義眼について想像していたのですが、実際に見るのは初めてです。

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Ribさん(以下、Rib) 健常の方はなかなか間近で見る機会がないですよね。

――Ribさんデザインの義眼がこうして箱に集まっていると、カラフルに輝いて、宝石箱のように美しいです。現在、Ribさんは義眼アーティストとして活動していらっしゃるんですよね。

Rib 最近では“義眼”を除いて、単にアーティストと名乗っています。義眼アーティストと名乗ると「提供している側」だと誤解されてしまうことがあるんです。私の場合、他者に提供するのではなく、自分自身の表現として発信しています。そうすることで世の中のさまざまなことを変えていきたくて。

 自分で義眼を作る技術はありますし、自分で義眼工房を開こうと考えていた時期もあったんですけど「その前にやるべきことがある」という考えに至り、工房を開くのはいったん置いておくことにしました。そして今は「発信すること」に注力しています。

©︎文藝春秋 撮影・細田忠

――どんなことを発信していらっしゃるのでしょうか。

Rib まず第一に、私は片目失明者への社会的支援や制度整備が進むことを強く望んでいます。

 “片目失明者”というだけでは、原則、障害認定の対象にはならないのが今の社会制度です。失明して萎縮した眼球が残っている場合、「被せ義眼」というものを使用するのですが、この「被せ義眼」が保険適用外となっているのが現状です。

 社会的な補助がないために、高額な費用を自己負担せざるを得ない片目失明者はとても多いんです。こうした社会制度上の不均衡が、正しく改められるべきだと考えています。