ノーマルタイプの義眼は「とてもよくできてるな」と感心したけれど…

――自費だと十数万かかるんでしたね。

Rib 私は障害者手帳を取得できたので「補装具支給券」というものをいただけました。たまたま私は、もう片方の目にもハンデがあるから要件に当てはまり、ある程度の資金で義眼を作れたんです。

――初めての義眼はどうでしたか?

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Rib 初めて義眼を着けてみたとき、外見がすごく変わるので「とてもよくできてるな」って感心しました。一瞬、すごく嬉しかったです。でも……その次に思ったのは「やっぱりもう少しお金がかかっても、希望の条件で作りたかった」ということ。作ってくださった業者のかたにも聞いてみたんですけど「そういうのは無理です」って言われて。

©︎文藝春秋 撮影・細田忠

 カラーコンタクトに合わせて瞳を少し大きくしてほしいっていうのもだめ。だから、もう片方の目にカラーコンタクトを着けると、片方だけスッピンみたいな感じになってしまう。

――当然、義眼にカラコンを重ねるなんてことは……。

Rib できないです。カラコンが乾いてバリバリになって、まぶたも義眼も傷つけてしまいます。

――初めて希望の義眼を作れたのは27歳とのことですが、どうやってそこに辿り着いたのでしょうか。

「美しい眼が欲しい!」強い思いで完成させた“星空みたいな義眼”

Rib 20歳のときから、海外で働いている義眼技師の方に連絡をとって、学びました。でも遠隔でのやり取りだとうまくいかないところも多くて。プラス就職や仕事の悩みもあったので、全集中できず、うまくいかないことが続きました。

 でも就職した会社で苦しくて押しつぶされそうになったとき「健常の人には着けることのできない、美しい眼がどうしても欲しい!」という強い思いが再燃して、海外の技師の方に「どうしても求めている義眼が作りたいから、あなたの国に行ってもいいでしょうか?」と意思強めの言葉で連絡を取ったら「来てもいいけれど……ちょうど今度、日本で義眼工房を開く知人がいるから、そっちの方がいいでしょう」とある工房を紹介してくれたんです。

――海外から日本に。一気に距離が縮みましたね。

Rib その工房に行って相談をしたら「自分はデザイン的な義眼を作るのは初めてなので、うまくできるかはわからないけど、一緒に試行錯誤しながら頑張りましょう」って言ってくださったんです。

 そのかたとやりとりをしながら、初めてのデザイン義眼が出来上がって。2021年の1月に完成したのが、星空みたいな義眼です。それを着けたとき「やっとなりたいと思っていた姿になれた!」と感慨深さを感じ、すごく明るい気持ちになりました。……それで、気づいたら職場に「退職します」って伝えていました(笑)。

Xより
箱に入ったさまざまな義眼。白目の部分が青い義眼はフクロウの目をイメージしたもの ©︎文藝春秋 撮影・細田忠

「これを欲しがっている人は世の中にたくさんいるだろうな」「それなら人生、そっちに振り切ってみよう」と考えたんです。そうやって行動することをきっかけに、義眼作りを教えてくださったり協力してくださるかたも見つかって、自分の技術も磨いていくことができるようになりました。