小西さんは京都の美術大学で版画を専攻していた。卒業後は正和堂書店を継がず、印刷会社に就職。約14年間、そこで紙器設計や店頭販促の企画などの業務を担当した。この経験が、現在のSNSの発信やブックカバーの制作につながっていると語る。

「店頭販促は『洗練されているものほど埋没しやすい』というのがあって。綺麗なものと売り場でいいものは違うんです。そのギャップに悩んだ期間もありましたが、それが私の今のクリエイティブのルーツになっていると思います」

ブックカバーのデザインはすべて小西さんが手がける。毎月の新作を制作するにあたっては、SNSなどの画面で見られることを前提に陰影をはっきり出し、季節感の要素を意識的に織り込むなど、“映える”ように設計しているとのこと。

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また、正和堂書店のSNSフォロワーは20〜40代の女性が大半を占めるため、その層に響くモチーフの選定を重視している。題材の決定にあたっては、スタッフや家族、来店客の声も取り入れるようだ。

「大喜利」で共感と反応を獲得

Instagramで10万人以上のフォロワーを抱える正和堂書店。しかし、フォロワー数を押し上げたのはブックカバーではなかった。

「2017年から正和堂書店を手伝い始め、そのころにInstagramを始めました。以前、読んだ本をFacebookでアップしていたんですが、それだと配信スピードも遅いし、セレクションも偏ってしまう。それでInstagramではフォロワーに寄り添うかたちで、スタッフのおすすめやランキングなどを紹介しました。

当時は読書アカウントが存在していなくて、まだまだブルーオーシャンな状態だったので、少しずつフォロワー数も伸び始めました。それに投稿を続けていると反応が良い本と悪い本が分かるようになってきて。良い方に寄せていったら、さらに増えていった感じです」

小西さんいわく反応が良かったのは旅やエッセイ、自己啓発系の書籍。こうした工夫で、ブックカバーが注目される以前からすでに1万人近いフォロワーを獲得していた。現在でも読者が気になっている本を意識的に投稿しているとも語る。