「町の書店は雑誌の売り上げが元々半分を占めていて、習慣的に書店へ来てもらえる文化を作っていたんです。それが崩れてしまい、8割減ぐらいになりました」
そして正和堂書店はブックカバーという強みを得ながらも、閉業の危機を迎える。
「2023年に、家族間で正和堂書店を潰そうかという話になって。ブックカバーが注目されてもなかなか売り上げが下げ止まらないし、このまま経営していてもしんどいだけ。もう建て替えて、テナントに貸そうと考えていたんです。でもなくすとなった時、改めてこの場所への思い入れの強さに気づいて。本屋をやりたかったというよりも、この場所を残したかったという思いの方が強かったかもしれないですね」
ブックカバーに書店の活路を求める
小西さんにとって、正和堂書店は幼少期からの遊び場だった。3歳で父を亡くし、母子家庭で育った彼は、幼稚園から帰ってくると店内でいつも遊んで過ごしたという。書店存続の危機を目の前にして、店への思いは自然と強くなっていった。
2023年6月、会社を辞め、3代目店主として正和堂書店で働く道を選んだ小西さん。書店員一本で生活していくことに、不安はなかったのだろうか。
「転職するぐらいの感じで見られていたので、大反対はされませんでした。ただ親は自営すること自体に心配はあったみたいですけどね。あと子どももいたので、妻からは『数年以内にこのぐらいの売り上げを達成しなかったら、書店員を辞めて別の仕事をやってね』とリミットを決められました」
以降は毎月の新作ブックカバー制作に加え、企業とのコラボレーションにもこれまで以上に取り組むようになった。なかでも、2023年8月に文庫本購入者に配布した「牛乳石鹸をモチーフにしたブックカバー」は特に大きな反響を呼んだ。
「牛乳石鹸コラボ」が転機に
牛乳石鹸を製造する牛乳石鹸共進社の工場は、正和堂書店と同じ大阪市鶴見区にある。ポップアップイベントで「カウブランド赤箱」を受け取った際、「石鹸のブックカバーってかわいいかも」とSNSに投稿したところ担当者の目に留まり、「一緒に地域を活性化させよう」という呼びかけからコラボが実現した。