「投稿するときはレビューサイトを参考にしています。本の紹介で人気のものがあれば、読者がどこに共感しているのか、そのポイントを探ってから投稿するんです。大喜利みたいな感じですね」

しかし、それだけでは正和堂書店の売り上げにはつながらなかった。出版不況の影響で、1日の売り上げが最盛期の3分の1以下に落ち込むこともあったという。

見てもらえる、でも買ってもらえない

「本を買う参考にはしていただいたんですが、購入先はネットというケースが多かった。読書推進という意味では役に立っていますが、小売店としては来店してもらえないと売り上げにつながらない。それで来店のきっかけになればと作ったのが、ブックカバーでした」

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小西さんは2013年、大阪・梅田で開かれた展覧会「約100人のブックカバー展」に参加。そこで富士山のブックカバーを出展したところ大きな反響を得ることになった。その体験を思い出し、「これを自分の書店でもできないか」と考え、アイスキャンディーのブックカバーを作成した。当初はシークレットで100枚ほどを準備。1枚あたり数百円かかっていたため、小西さんいわく「販促費というよりは広告宣伝費と位置づけていた」とのこと。

本格的にブックカバーを作り始めることとなったのは、全国の書店に大きなダメージを与えたコロナ禍の2021年だった。

「都道府県間の移動制限があった時に『書店に行けないから、オンラインストアでブックカバーを販売してほしい』という問い合わせが多くて。もともと無料で配布しているものなので、販売することに抵抗はありましたし、売るとなるとある程度の個数を作らないといけないので」

「この場所を残したかった」

小西さんはコロナ禍で書店の売り上げが大きく落ち込むニュースを見て、「全国の書店に来店のきっかけをつくりたい」と考え、2021年にクラウドファンディングを企画。人気の高いアイスキャンディー柄のブックカバー約10万枚を、全国262書店に寄贈する取り組みは多くの支援を集め、全国メディアにも取り上げられた。それによって正和堂書店の知名度は高まったものの、売り上げは微増にとどまった。