氷河期世代は社会に出る前から洗礼を受け、出てからも何度も壁にぶち当たる経験をしてきた人が少なくない。そのためか、打たれ強い人や黙々と努力する人が多いように筆者も感じている。「時代をいかに攻略するか」が身体に染み付いている氷河期世代だからこそ、これからの時代に「定年後も働きたい」と考える人が多いだろうと思えるのも同感だ。
実際に自身が経験した就職活動について聞くと、大津さんはこう語ってくれた。
「高校卒業後も離婚後も、確かに就職活動は厳しかったのですが、やる気があれば何でも挑戦させてもらえる時代だったと感じています。私の場合はスイミングのインストラクターのアルバイトをしながら、スキマ時間で化粧品の訪問販売をするなど、やりたいことに挑戦しながら、多くの経験を積むことができました」
確かに、就職氷河期以前の正社員至上主義的な時代だったら、社会的にはあまり認められない働き方だったかもしれない。そんな大津さんは、現在も持ち前の「やる気」で新しいことに挑戦し続けている。
「私は仕事が大好きで、55歳を迎えた今も辞める気は0です。でも55歳という節目は、『あっという間に100歳になっちゃうかも』と気付く良いきっかけになりました。これからはもう少し『自分のための時間』にも目を向けたいと思います」
古来より「火事場の馬鹿力」ということわざがあるように、切羽詰まった状況に追いやられると、人は普段からは考えられないような力を発揮する。大津さんの話を聞いて、氷河期世代は「火事場の馬鹿力」を発動させながら生き延びてきた世代なのかもしれないと想像した。そして、難しい時代を生きるのも「悪くはない」と感じさせられた。
「苦難の時を生き抜くコツは、『とにかく前を向いて明るく生きる』こと。そして、『何とかなる』と言い聞かせることかな?」
大津さんは自身のことを「弱虫で泣き虫」と評価しながら、いつも明るく温かい笑顔を絶やさない。彼女からは思わずこちらまで笑顔にさせられるようなパワーを感じる。「強い」と「弱い」は表裏一体だ。「弱虫で泣き虫」だからこそ、自ずと弱っている人や辛い思いをしている人に目がいき、明るく温かい笑顔を向けられるのかもしれない。
