労働者タイプAには、①他人と取り替え可能な同じような人材になる、②会社が用意した働き方だけで満足する、③雇用不安や賃金減少のリスクを極端に嫌う、などの特色がある。
こうした人材になると、会社に対する立場と交渉力が弱くなり、会社の言いなりになって能力の割に低賃金で働かざるを得ない。実質的に「使い捨て」されることも珍しくない。
正社員としてそこそこの会社に入社することができると、非正規労働者よりも給料が少しいいかも知れないし、クビにはなりにくいが、その立場に安住すると、一生を通じて会社の奴隷のような存在になる可能性が大きい。いわゆる「社畜」だ。
これを回避するためには、他人とちがう能力を持ってそれを仕事に使わせてもらうようにアピールしたり、副業ができるようになったり、転職のリスクを取るようになったり、あるいは、経済的な備えを持って会社と強く交渉できる立場を確保したり、といった工夫と努力が必要だ。
「他人と同じ」を求めるだけでは幸せにはなれない。不利な方への「重力」が働く。これもよく覚えておけ。
資本家の隙を突き、「労働者タイプB」を目指せ
プロの労働者タイプBは、個々にちがっていて個性的だ。だいたいは頭脳を武器としている。一方、労働者タイプAは個々人に個性がなく似た人たちで、相互に取り替え可能で、安定を求めて競争している。 さて、現在、労働者タイプB的な社員が有利でかつ徐々に存在感を持ち始めていることに、世間はまだ十分に気づいていない。
株式性の報酬を求めて労働者タイプBに近づく働き方と、単にリスクを取らない労働者タイプAで上手くやっていこうとする働き方との有利不利の「ギャップ」は大きい。
この点に気づいてほしいという意図が、君に書いた手紙の「リスクに対する働きかけ方が逆方向に変わった」という文面に込められている。
資本家・投資家から見て、労働者タイプBは資本の価値を有利に持ち出そうとする油断のならない、少々悪い奴だ。資本家も油断できない。
株主から巨額の報酬をむしり取る米国企業の強欲経営者の弊害はそろそろ世間で目立ち始めているが、あそこまで「悪くなれ」とは言わない。だが、ほどほどのレベルで、資本家の隙を突くことは必ずしも悪いことではない。
資本家の側でも、自分が理解できない「Black Box」を放置したまま、お金と地位と株式の力だけで他人を思うままにコントロールできると思うべきではない。それは甘い。
資本家でも、労働者でも、どの立場でも、工夫のない人間が敗れるように経済はできている。
さて、息子よ。君は、どのくらい「悪い奴」になって世渡りしようとするのだろうか。ちょっと楽しみだな。



