株式投資で高い利益を得るためには、企業の成長が必要だと考えがちだ。しかし、経済評論家として活躍した山崎元氏は、「高成長でも、低成長でも、期待リターンは同じ」と説く。『経済評論家の父から息子への手紙』(Gakken)より一部抜粋し、その理由を紐解こう。(全3回の3回目/#1を読む、#2を読む)
「世界経済の成長を信じて投資する」は大間違い
本書では株式投資で得られるリスクプレミアムを年率5%程度と想定している。株式投資のリターンは、短期金利(無リスク金利)にリスクプレミアムを足した値だ。
この高いリターンは、どこから得られるのか。素人が考えがちなのは、株式投資の高いリターンは企業や経済の成長から得られるとするものだ。「世界経済の成長を信じて投資する」などと言いがちだ。
しかし、ちがうのだ。息子よ、君はもう少し深くものを考える人間になってほしい。
では、今後人口が減って低成長が見込まれる日本の株式はダメなのかというとそうではない。
実は、株式のリスクプレミアムは市場での株価形成の過程を通じて生じる。以下、この事情を納得してもらおう。株式投資は、対象が高成長でも低成長でも同様に有望でありうる。投資家が期待を託すべき相手は、「経済成長」ではなく、「市場の価格形成メカニズム」なのだ。
株価、すなわち株式の価値はおおむね将来得られる一株当たりの利益の割引現在価値の合計として計算できる。



