葬儀のときも、浩三さんは「何で喪主の名前が自分なんだろう。何で喪主やってんだっけ?」とまだ現実と受け止めきれていなかったという。同時に、娘を自殺に追い込んだ事態の究明に人生を捧げようと誓ったという。
現在も浩三さんは、トー横に通っている。
「トー横に通うなかで、あきこを弔問したいという子たちと出会い、家に招きました。それは今も続いています。あきこが自殺した2023年は本当に多くの人が亡くなりました。私がトー横に通うようになって、『キッズたちが自殺するのを止めたい』と言っていた男性自身も亡くなったのはショックで、怖くなりました。
自分が話をしている子たちは明日も生きているだろうか? と不安になるんです。女の子の売春や薬物、自殺などトー横には問題がたくさんあります。ただ支援したい気持ちはありますが、飲まれないように距離感にいつも注意しています」
「トー横に来る人たちは大人を信用できない人が多い」
それでも浩三さんがトー横通いを続けるのは、亡くなったあきこさんと同じような悩みを抱えている若者たちが多くいるからだ。
「トー横に来る人たちは大人を信用できない人が多い。トラブルに巻き込まれて、取っ組み合いになったこともあります。それでも、キッズの子たちをどうやって助けるのか。自分ができることはたかが知れていますが、どう接すればいいのかは考え続けています」
浩三さんは支援団体や、行政への働きかけも始めている。
「あの子たちがトー横に来るのは仲間がいるから。それなら行政側が宿泊施設を作ればいいのかもしれない。親と一時引き離して、安全を保証するシェルターが欲しい。自分でやりたい気持ちもありますが、そのためには会社を辞めないとできず現実的ではありません。ジレンマですね」
歌舞伎町では、今年10月13日にも14歳の女子中学生がビルから落下して死亡する事件が起きた。状況改善の糸口は見えていない。
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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)
