ラランド・サーヤが見た“ベテランの後ろ姿”

 2020年7月、地元・熊本県人吉市が九州豪雨によって被災。内村の実家も床上浸水するなど甚大な被害を受けた。その後、復興に向けた荒れ地が残る人吉市の「この景色を映像に残せたら」という思いが湧き上がり、自らメガホンを取ってダンスに打ち込む女子高生を中心とする青春映画に仕立てた。

「自分に何かできないか」という率直な気持ちから具体的な行動を起こす。内村が信頼される理由は、このピュアさにあるのではないか。

 61歳。数々のバラエティーで活躍し、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の総合司会を4度務め、俳優、映画監督、作家としての顔も持つ。そんな多才なベテランは、今も舞台に立ち続けている。

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内村光良 ©文藝春秋

 昨年の『内村文化祭'24 還暦』を観た折、筆者は内村のバイタリティーに舌を巻いた。公演は、内村がせり上がりで登場し、立ったまま微動だにしないところから始まる。いわゆる「デンジャラス・ワールド・ツアー」のオープニングでマイケル・ジャクソンが見せた演出のパロディーだ。

 これを『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(フジテレビ系/1990年~1993年)で内村が演じていた名物キャラ・九州男児に扮してやるのだから笑ってしまう。その後、ラランド、ルシファー吉岡、勢登健雄、俳優の志田こはくと楽しそうにコントやトーク、芝居を披露し、女性ダンサーたちとともに懸命にダンスを踊っていた。

 そんな内村を見て、自然と前向きな気持ちが湧き上がった。「まだやれるぞ」「老いは楽しめる」という肯定的なメッセージを送っているように思えたのだ。2023年、2024年の公演に参加したラランド・サーヤは、『内村文化祭』に向き合う内村をこう振り返っている。

「リハ終わって、みんなちょっと小休憩で楽屋に戻るんだけど、まだ残ってずっと練習してるの、ひとりで。(中略)そんな人、厳しくあっていいのに、うちらには『全然間違えていいよ』って言うの。『楽しんでいこう。全然飛ばしても構いませんから』って円陣のときに。

『絶対に楽しんでいただければ大丈夫ですので』みたいな。『よろしくお願いします。ごめんね、もし僕間違えたら』とか言うの。誰よりも練習してる人が(笑)」(YouTubeチャンネル『ララチューン【ラランド公式】』2024年1月27日投稿の動画)