「お客様をお迎えに上がった帰りに、カーラジオで聴いていたのがアメリカン・エアラインズが提供する『ミュージック・ティル・ドーン(Music Till Dawn)』という深夜の音楽番組でしてね。毎晩、これを聴くのが楽しみで、日本にもこんな番組があればいいのになぁといつも思っていたんです」

 後藤は渡りに船とばかりに、一気に番組の趣旨を熱く語った。

「夜間飛行の最終便がテイクオフする」というコンセプト

「面白い番組になりそうだ。ぜひ、やりましょう」

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 あの手この手で説得しようと意気込んでいたところ、あまりにあっさりと企画が通ったので拍子抜けした。

 日本航空の思惑に合致した企画だったということもあるだろうが、FMラジオへの思い入れが強い伊藤とのめぐり合いが幸いした。

 日本航空の提供が決まると、放送時間について相談する。

「夜間飛行をイメージした音楽番組をまず15分ベルトから始めるのはどうですか?」

 後藤が当初に考えていた案を口にすると、

「15分なんかじゃ足りません、1時間はないと」

 伊藤がこの番組にかける本気度が伝わってきた。

 その思いに応えるように後藤は提案した。

「夜間飛行に絶好の時間があります。午前零時からの1時間はどうでしょうか。一日の終わりを告げる時報後に夜間飛行の最終便がテイクオフするというコンセプトです」

「それはいい。リスナーは最終便で異国に思いを馳せるわけだ」

 パーソナリティを「機長」になぞらえて、コックピットから旅にまつわる物語をリスナーに伝えるという大枠もまとまった。

 こうして、月曜から金曜までの午前零時から1時間ベルトでのオンエアが決まった。

次の記事に続く 「女性の声には説得力がないから」とニュースは読ませてもらえず…FM東京初の新卒アナウンサーが振り返る“ラジオ黎明期”