「できるだけ厳しい判決を下してほしい」──娘を殺された父親は、法廷でそう訴えた。9歳の少女を“しつけ”の名のもとに虐待し、死に追いやった母と恋人。2009年に関西で起きた凄惨な事件で、実行犯の2人に下った判決とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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9歳少女を虐待死させたカップルのその後

 暴力については「京子にうそをついたことを反省してほしかった」などとしつけの一環だったと弁明し、「感情的になり、やりすぎたことは反省しているが、自分自身が親からされていたことで、虐待のつもりはなかった」と弁解した。

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 奈緒も死体遺棄については認めたが、保護責任者遺棄致死については「古賀と共謀したわけではない」と起訴事実を一部否認した。

 奈緒は捜査段階で次のように供述していた。

「古賀から『お前の育て方は甘い。前夫のやり方を持ち込むな』ときつく言われていた。叱り方はベランダや玄関に京子を立たせるというもので、一晩中立たせていたこともあった。でも、京子が宿題をさぼった理由を言わないから、仕方がないと思っていた。

 事件の1カ月前ごろから、古賀が京子を叩くことが多くなり、顎、足、太ももを殴り、踏みつけたりして、京子は自力で立ち上がることができなくなった。でも、私は京子が自分なりに考えてくれる子になればいいと思って、古賀のすることを止めなかった。

 京子の食事だけ違うものにするように言われ、京子におにぎりを与えると、『ありがとうございます』と言われ、自分の子ではないように感じた。徐々に京子は弱っていき、一日中寝るようになり、おもらしするようになった。動作もゆっくりになり、介護老人のようだった」

 公判では被告人質問で、検察が「内縁の夫の愛情を失うことを恐れ、自ら京子さんの頬をつねり上げた上、内縁の夫の暴力を黙認するなど共謀は明らか」として、鋭く追及した。

検察「古賀が好きだったのか?」

奈緒「よく分かりません」

検察「じゃあ、どういう感情を?」

奈緒「……」

検察「我が子を虐待し、そこに居続ける理由は?」

奈緒「親がくっついたり、離れたりすることは、子どもを振り回すことになると思っていた」

検察「京子ちゃんを守るより、自分の居場所を守ることを優先したからそうなったんじゃないのか?」

奈緒「京子を守るためでした。自分の仕事を守ることが京子を守ることだと思っていた」

検察「我が子が危険にさらされているのであれば、助けを求めるべきだったのでは?」