厚生労働省によると、日本では年間で2万人近くが自殺している。これは主要7カ国で最悪の水準であり、文字通りの「社会問題」だ。さらに未遂者は50万人規模とされるが、そうした人たちはどのような予後を過ごしているのか。

 120錠ほどの薬を服用して自殺を図り、失敗=生還した人物が病院で味わった体験を『死ぬのも下手でどうするんだ 服薬自殺失敗レポート』(木本乃伊著、彩流社)から一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む)

自殺に失敗→病院で目覚めた人物が、壮絶な体験を振り返る 画像はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

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入院で最も辛かったこと

 最も驚いたのは、尿道の管ですが、最も辛かったのは、腹痛です。四六時中お腹が痛すぎて辛かったです。大量に摂取した睡眠薬などの薬と、それらを体内から排出するために投与された薬のせいです。

 便意は常にあり、頻繁にトイレに駆け込みました。意識が戻ってから退院の日までずっと痛いままでした。何度トイレに行っても解消されず、ずっとお腹の張りを感じていました。学生時代、鳥の胸肉を焼くのが面倒で半生で食べてしまい、胃腸炎になったことがあるのですが、その痛みに匹敵する腹痛でした。

 しかし、自宅で腹痛に悶えるのとは訳が違いました。病院では、トイレに行きたくとも、その度にナースコールを押し、看護師さんに来てもらい、体に付いている心電図のコードなどを外して、ベッドの柵を外して、点滴のスタンドを持って、看護師さんにトイレまで同行してもらい、用を足したら、トイレのボタンで再び看護師さんを呼んで、ゆっくり歩いて病室へ戻って、ベッドに戻って、柵を戻して、心電図のコードなどをまた体に繋ぎ直さなくてはいけないのです。

 その手間が、この苦痛をさらに辛いものにしました。