便意を看護師さんに伝えると「不思議な道具」を持ってきた

 10分前にトイレに行ったばかりなのに、また便意が来て、またナースコールを押して、またコードを外して、また点滴を持って、またトイレまでよちよち歩く、という煩わしさを多々繰り返しました。痛い上に面倒臭く、看護師さんの手を煩わしている申し訳なさもあり、精神的にも肉体的にも、しんどいものでした。

 トイレに行って精一杯踏ん張っても、何も出ず、お腹は痛いままという事態も繰り返しました。多少の緩和はあっても、瞬く間に便意も腹痛も最高潮へ登りつめるひどいものでした。一度、おならかと思い力んだら、実が出るなんて事態もありました。そこで、オムツを履かされていた理由を深く理解しました。ですので、面倒でもナースコールを押してトイレにはしっかり小まめに行くようにしましょう。

 また、便の色と臭いが特殊なものでした。色は真っ黒で、臭いは嗅いだことのない奇妙な異臭でした。具体的には、家畜小屋の臭いに、レモンや酢のような酸っぱい系の臭いが混ざったような感じです。ただ、この腹痛に関しては、あれだけ大量に薬を飲んだのですから、然るべき報いであり、何の不満も疑問もありませんでした。

ADVERTISEMENT

 尿道の管が外れるまでは、大便の方もベッドの上でしなくてはいけませんでした。

 目覚めてすぐに腹痛に襲われたわけではなく、最初の腹痛までは2時間くらい猶予がありました。自分の状態を把握したり、精神的な整理をしたり、目覚めた直後は内面的に色々と忙しく、腹痛に気づかなかったのだと思います。この腹痛に気づくまでが入院中で一番体調がよかったかもしれません。一度腹痛に気づいてからは、止むことがなかったです。

トイレに行けず、ベッドの上で大便せざるを得なかった ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 自分の病室には、他の患者さんも他のベッドもなく、自分1人であること。自分が薄く青い病衣を着ていること。ベッドの高さや角度がスイッチで変えられることなど、ある程度現状が把握できてきた頃、地獄の嚆矢となる始まりの腹痛に襲われました。

 ナースコールを押し、来てくれた看護師さんに便意を催した旨を伝えると、わかりましたの表情と共に看護師さんは病室を去り、私がどう大便を済ませるのか疑念を抱いている数秒後、緑色のちりとりみたいなものを持って戻ってきました。