イラン人を両親に持つ声優・俳優のニケライ ファラナーゼさん。今年2月に発売されたゲーム『モンスターハンターワイルズ』では主人公・ハンター(タイプ2)の声を担当するなど、存在感、注目度ともに増している。

 現在は日本国籍に帰化したが、イランにルーツを持つため、見えない壁に悩んだこともあったと語る。映画ファンなら快哉を叫んだであろう『シャン・チー』ケイティ役(演:オークワフィナ)の吹き替え――。いかにして表現を研磨してきたのか、現在にいたるまでの足跡を振り返ってもらった。(全3回の2回目/続きを読む

ニケライ ファラナーゼさん ©︎榎本麻美/文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

演劇も学べる高校に進学「絶対声優になる」と決心

――高校卒業後は、桐朋学園芸術短期大学の演劇専攻へ進学します。

ニケライ 私は中学校の頃から声優の仕事に興味があって、演劇も学べる晴海総合高等学校にいきました。当時からコスプレが大好きだったので服飾部に入ったのですが、その後、「絶対声優になる」と決心し、途中から演劇部に入りました。そして、お芝居を本格的に勉強するために、桐朋短大へ行くことを決めたんですよね。

 声優は声優、俳優は俳優と分けて考える方もいらっしゃるかもしれませんが、役者なので全く一緒なんですよ。声を専門にするか、身体全体を使ってやるか、その差こそありますけど、根っこでは何も変わらない。私にとって演劇を始めた晴海高校の日々と、演劇漬けだった桐朋短大の2年間は今でも基礎になっているので、行ってよかったなって心から思っています。

――ご両親は、声優を目指すと伝えたとき、どんな反応を?

ニケライ 最初は、やめてほしいみたいなことを言っていましたね。「声優? なにそれ?」みたいな感じで、やっぱり心配だったと思います。かなり不安定な仕事なので、親なら当たり前ですよね。それでも最終的には「好きなことをやりなさい」と言ってもらえました。

©︎榎本麻美/文藝春秋

――短大卒業後、賢プロダクションの養成所へ行かれるんですよね?

ニケライ ですね。賢プロダクションの養成所へ2年行って、4年ほど所属しました。その後はフリーとして4年ほど活動し、現在はアトミックモンキー所属なので、芸歴でいうと10年くらいかなと思います。

専門性の高い声優という仕事

――桐朋短大、養成所では、たくさんの学びがあったと思うのですが、ニケライさんにとって印象的なことを挙げるとしたら、どんなことでしょう?

ニケライ 桐朋では、演技の基本や演劇の歴史を徹底的に学び、実践していきました。三浦剛先生の授業が私の中で特に基盤になっています。一言では言い表せないくらい、素晴らしい先生と授業ばかりでした。

 養成所では、現役のディレクター講師陣がたくさんいらっしゃるので、毎週オーディションの気持ちで通ってました。実践方式でアフレコをする機会も多かったです。

 舞台であれば、身振り手振りやジェスチャーを交えて、いろんな形で表現できるんですけど、声だけとなると勝手が違う。やっぱり声専門のテクニックが必要かなと思います。自分がイメージしたもの、そしてクライアントが求めてるものを声だけで正確にアウトプットできているか、イメージとのギャップはないか、などの専門性が必要な仕事だと思います。