イラン人の両親を持つ声優・俳優のニケライ ファラナーゼさん。映画『シャン・チー』ではケイティ役(演:オークワフィナ)の日本語吹き替えを担当し、今年2月に発売されたゲーム『モンスターハンターワイルズ』では主人公・ハンター(タイプ2)の声を担当するなど、その存在感は増すばかりだ。

 イラン・イラク戦争によって両親は来日を決意。ニケライさんは日本生まれ、日本育ちである。しかし、イランにルーツを持つため、見えない壁に悩んだこともあったと振り返る。どうして彼女は、声優・俳優を目指そうと思ったのか。話を伺った。(全3回の1回目/続きを読む

ニケライ ファラナーゼさん ©︎榎本麻美/文藝春秋

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切り離せない“戦争”と“私の家族の歴史”

――ニケライさんは、在日イラン人のご両親のもと、東京で生まれ、東京で育ちます。お父さまとお母さまは、いつ頃、日本に来られたのですか?

ニケライ イラン・イラク戦争(1980~1988)が終わった後、「イランで生活していくことは難しい」ということで、両親は日本に行くことを決めたそうです。ドイツと日本、どちらに行くか悩んでいたらしいのですが、母の兄がすでに日本にいたこともあって、日本を選んだと聞きました。収入が安定してきたらイランに戻るつもりだったそうなのですが、私を身ごもったので、そのまま日本で頑張ろうとなったみたいで。

 戦争がなければ、私は日本で生まれていないし、日本で育っていない。そういう意味では、戦争と私の家族の歴史は切り離せないですね。

©︎榎本麻美/文藝春秋

――イランでは、NHK連続テレビ小説『おしん』が大人気で、その影響もあって日本を選ぶイランの方も多いと聞きます。

ニケライ 『おしん』の影響で、自分たちのように苦しい思いをしている人たちも、日本であれば共感してもらえるところもあるんじゃないか――といった気持ちは両親にもあったと聞きますね。私が小さい頃、『おしん』の再放送をやっていたのですが、放送後に視聴者から届いた手紙やはがきを紹介するミニコーナーのようなものがあって、それ用におしんの絵を描いて送った記憶がありますね。