昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

“考える人”ヨシタケシンスケの「大人が読んでも面白い」絵本の世界

絵本作家・ヨシタケシンスケ インタビュー #1

ヨシタケシンスケさんが影響を受けた3冊の絵本

――ヨシタケさんが、子どもの頃に好きだった絵本を教えてください。

ヨシタケ さきほどお話ししたかこさとし先生の『からすのパンやさん』は、自分が子どものころに読んですごくワクワクした絵本です。それから、柳生弦一郎さんの絵本。『はなのあなのはなし』『おっぱいのひみつ』(福音館書店)などたくさんあるのですが、柳生さんは、子どもの頃の僕にとって、一番信頼できる大人だったんですね。ものの言い方が上からじゃなくて、「僕もわかんないんだけど、こういうのって楽しいらしいんだよ。一緒に考えていこう」。そんな語り口が、子どもながらに信用できたんですよね。

 僕にとっての大人も子どもも楽しめる絵本の代表というのが、佐々木マキさんのデビュー作である『やっぱりおおかみ』(福音館書店)。僕、小さい頃にあの本が好きでよく読んでいたんですけど、意味が全くわからなかったんですよ。

 

――好きだけど、意味がよくわからなかった。

ヨシタケ そう、でもなんか絵がかわいいので、よく読んでいたんですよね。それで、大学生くらいの時に、街の本屋さんでたまたま見かけて「ああ、この絵本むかし家にあったな」って思い出して。読んでみたら、意味がわかったんですよ。「あっ、これこういうことが描いてあるんだ。すげー!」と思って。わからないながらも、何回も読んだ子どもの頃の僕も、なかなか辛抱強かったと思いますけど(笑)。

 でも、子どもの頃は絵を楽しんでいたし、大人になったらそのお話のメッセージみたいなところに感動するわけだし。1粒で2度おいしい、お得な絵本のお手本だと思っています。かこさんのわくわく感、柳生さんの信頼感と、佐々木さんの大人も子どもも両方いける、お得感。この3人に自分はすごく影響を受けていますね。

 

企画力にすぐれた絵本には、「うまい!」そして「ずるい!」

――大人になってから、気になるようになった絵本はありますか?

ヨシタケ そうですね、お気に入りの絵本でいうと、『ハリス・バーディックの謎』(C・V・オールズバーグ、河出書房新社)という本。とにかく絵がきれいで美しい1冊です。読んでいただくとわかるんですけど、最初の1ページしか長い文章はなくて。あとはほとんど、1枚の絵にタイトルと説明文だけなんですよ。その構造がすごく面白い。「これひょっとしたら、最初から絵本にしようと思って描いたわけではなくて、別々に描きためていた絵をまとめただけなんじゃないか」と思うようになって。

 著者のアイディアなのか、編集者のアイディアなのか、ほんとのところは僕にもわからないんですけど、企画力あっての面白さなんですよね。「うまい!」と思ったあとに「ずるい!」とも(笑)。

365日、いつでも持ち歩いている手帳

――さっそく、教えていただいた絵本を読んでみたくなってきました。

ヨシタケ 絵本ってすぐ読めますし、立ち読みでも読めちゃうジャンルです。そういう意味では、すごく色々な種類を読むことができます。そもそも、絵本コーナーってお子さんやお孫さんがいないと、あんまり立ち寄らないスペースですよね。でも絵本の中には、大人が読んでも十分楽しめる本がいっぱいある。すごいいい本もあるし、くだらない本もあるというのは、一般書と一緒なんですよね。

 だから絵本売り場に行ってほしい。たとえば独身の人でも、自分で探してみることで、すごくいいものがいっぱいあるってわかると思うんです。もともと、絵本作家じゃなかった僕としては、絵本に興味がなかった人にも、絵本売り場へ行ってもらうというお手伝いができれば。そうすることで、僕が絵本作家をやらせてもらう意味が出てくるのかな。そういう意味でも、大人が読んでも面白い本を作り続けていきたいと思うんです。

#2へつづく)

『りんごかもしれない』と『このあとどうしちゃおう』

写真=末永裕樹/文藝春秋

よしたけ・しんすけ/1973年神奈川県生まれ。絵本作家、イラストレーター。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。イラスト集『しかもフタがない』『りんごかもしれない』などの絵本ほか著作多数。MOE絵本屋さん大賞1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞など受賞歴も多数。2児の父。

この記事の写真(11枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー