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“考える人”ヨシタケシンスケの「大人が読んでも面白い」絵本の世界

絵本作家・ヨシタケシンスケ インタビュー #1

「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」でトップ10のうち4冊もランクインしたのが、ヨシタケシンスケさんの絵本と書籍。2013年に『りんごかもしれない』で絵本作家デビューしてから5年。いかにして、子どもだけでなく、周りの大人たちの心もつかむ絵本をたくさん生み出しているのか。「絵本作家という意味ではまだ全然、新人なんです」と語りながら、作品のありようについて常に考え続けているヨシタケさんに“大人の絵本の楽しみ方”を聞きました。

ヨシタケシンスケさん。2人の小学生の父親でもある

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「大人が読んでも面白いですね」と言われてうれしい理由

――絵本作家としてデビューされたのは、40歳の時だったそうですね。

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ヨシタケ そうなんです。イラストレーターとして長く仕事をしてきたのですが、絵本作家としては、最初の本が5年前なので、絵本作家という意味では、まだ全然新人なんです。

――書店の絵本売り場に行くと、ヨシタケさんの絵本コーナーがすぐ目につきます。いろとりどりで、とてもにぎやかですよね。

ヨシタケ 幸いたくさんの方に読んでいただくことができて。よくご感想をいただくんですけれども、僕自身が言われて一番うれしいことが「これ、大人が読んでも面白いですね」なんです。

 

 絵本作家の方の中には、本当に色々なタイプの方がいらっしゃって、自分自身が子どもとして描く作家さんもいらっしゃれば、大人の立場から子どもを描かれる方もいらっしゃる。それぞれの立ち位置で、作品を作られているみたいなんです。僕の場合は、どうしても、絵本というものを捉える時に、親目線が入ってしまいます。絵本って面白いのが、読むのはお子さんなんですけど、買うのは大人ですよね。

――たしかに、そうですね。

ヨシタケ もちろん子どもにまつわる商品は、そういうものが多いですけど、でも絵本というのは「読む人」と「買う人」が別。珍しい“消費”のかたちだと思うんです。そう考えた時に、やっぱり大人も子どもも、どちらも楽しめて、「これなら買ってもいいや」って思ってもらえることがお得だと思うんですよ。大人の場合は、自分の好きなものを好きなだけ買えますが、子どもの場合はどんなに好きでも、「こんなウンチばっかり出てくる本だめ!」とか言われちゃうと、もう持って帰れないわけですよ(笑)。

――大人が面白いと思えば、子どもも家でゆっくり読ませてもらえる。

ヨシタケ はい。僕が2児の子育てをしている中で、絵本を買うにしても、自分が読んでいて楽しいものを買った方が、親としても盛り上がるわけで。子どもが1人で絵本を買って帰ることはまずなくて、絵本の周りには必ず大人がいるんです。だから、1冊の絵本を作る時に、その絵本の中に子どもと大人、それぞれが喜んでくれそうな「要素」を、両方入れたいと思っているんですよね。「大人が楽しめる」と言っていただけるのは、すごく光栄なことだと思っています。