――高校3年生の時に、2回にわたって耳たぶを作る大手術をされたそうですね。

小林 右耳は穴しかない状態やったので、そこに耳を作る、という手術でした。まず1回目の手術で耳の輪郭を作り、半年後に、前の手術で作った耳たぶの輪郭を立体的にする手術、という流れだったんですね。

――耳の輪郭を作るとは、具体的にどうやって?

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小林 あばらの軟骨を3本抜いて、耳のかたちを作り、足のつけ根部分の皮膚を使って耳たぶを作る、というものでした。

――赤ちゃんの時から通算21回手術を受けてきたということで、入院の準備も手慣れている?

小林 「要領いいね」って看護師さんにも言われます。シャワーに入れる時間も20分とか、時間が限られているので、いかにスピードよく入るかっていうので、ボディソープは絶対に泡タイプです。

 あと、S字フックは5個ぐらい持っていって、タオル掛けのところにかけてエコバッグを下げたり、ベッドの手すりにかけて、コインランドリーで乾かなかった洗濯物を干したりとか。そういう知恵はだいぶ身についたかなと思います。

 薬も、看護師さんより自分の方がいろいろ分かってたりしますね。

――自分に使う薬とか、分かりますよね。

小林 手術の時に医療テープを貼るんですけど、「このテープは合わないので、◯◯テープにしてください。軟膏はこれとこれで」って言ったり(笑)。

テープでかぶれてしまった時

 新人の看護師さんには、「何かあったら◯◯看護師に聞いたほうがいいよ」とか、「この先生、たぶんこの時間は電話出えへんと思うから」って教えたり。内部事情メッチャ知ってるやん、みたいな(笑)。

「はじめて泣き叫んで訴えた時の両親の顔は、今でも忘れられないですね」

――話がそれてしまいましたが、高校生の時の耳の手術の際は、かなり葛藤があったそうで。

小林 2回にわたる耳の手術の合間の半年間を使って、「鼻の手術もやっちゃおうか」と病院から提案されまして。なかなか鬼畜やなと思ったんですけども(笑)。そこでもう爆発しちゃって。

――1年で3回の手術となると、高校生活も謳歌できないですよね。

小林 「きれいになれるなら手術をしたい」と思ってるのも自分やけど、「手術したくない。皆と最後の高校生活を過ごしたい」と思っているのもほんま。この気持ちをどう処理したらいいんやろうっていうのでパニックになって。

 それではじめて親に、「手術する意味が分からん!」と泣き叫んで反抗したんです。

――それまでは素直に治療をしてきた?

小林 ずっと大人しく手術や治療をしてきたし、親の前で泣くこともほとんどなかったんです。実際、手術をする度に症状が改善されたり、ご飯も食べやすくなったので、手術が自分にとって良いことだ、っていうのも頭ではわかっていました。

 でも、耳たぶを作ったとしても、耳の聞こえが変わるわけじゃない。“見た目”だけのためにこんなに辛い思いをして、高校生活もなげうって、なんか良いことあるんやろか。眼鏡をしたい、イヤリングをしてみたいってだけで、こんな大変な思いをする必要があるんやろかと、親に全部ぶちまけたんです。

 はじめて泣き叫んで訴えた時の両親の顔は、今でも忘れられないですね。

次の記事に続く 「“見た目”を改善するためだけの手術」に対する葛藤も…鼻、唇、耳がない口唇口蓋裂で生まれた女性(31)が語る、病気について発信を始めた理由

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