「口唇口蓋裂」とその合併症等によって鼻と唇、耳がなく、心臓に3つ穴が開いた状態で生まれた小林えみかさん(31)。これまでに20回以上手術を受け、現在は口唇口蓋裂の当事者・家族支援を行うNPO法人の代表を務める。
日本に口唇口蓋裂の患者は500人に1人いるとされ、決して珍しい病気ではないが、いまだに差別や偏見もあるという。そんな社会を変えたいと活動する小林さんに、“見た目”や治療に苦しんだ半生について聞いた。(全4回の4回目/最初から読む)
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「“見た目”を改善するためだけの手術」に対する葛藤
――高度難聴で幼少期の頃から補聴器を使っているということですが、寝る時は外して?
小林えみかさん(以下、小林) お風呂と寝る時は外して、それ以外はずっと付けっぱなしです。仕事の日は自然と起きれますが、旅行先で一人寝泊まりする時や大事な予定が入ってる日はアラームの音が聞こえないと困るので、付けっぱなしで寝てます。
昔、実家の外壁の工事があった時、他の家族は家にいてられへんぐらいメッチャうるさい状態でも、自分だけはまったく工事の音が聞こえず、爆睡していたこともあります。
聴力としてはたぶん、自分の真上に飛行機が飛んでやっと「あ、飛行機通ったな」って心地よく聞こえるぐらいかなと思います。
――たとえば大災害が起きた時は、いの一番に補聴器を持っていかないとですよね。
小林 そうですね。私の住んでいる大阪で大きめの地震があった時、緊急地震速報のアラームが鳴ったんですけど、それも自分には聞こえなかったので、怖かったです。その時は振動で気づけたからまだ良かったけど、何か異変があっても音で気づくのはなかなか難しいですね。
――高校生の時、穴しかなかった右耳に耳の形を作る手術をした際には、「“見た目”を改善するためだけの手術」について葛藤があったそうですね。
小林 聴力も良くなるんやったら、どんな手術でも「やるやる」って前向きに言えるんですけど、ただ耳の形を作るだけで2回も手術せなあかんし、それも8時間の大手術ということで、悩みました。
親にもその時に思いをぶつけた結果、家族の絆も強まったし、今となってはやってよかったなとは思ってるんですけど。
――耳たぶを作った後、憧れだったという眼鏡やイヤリングはしましたか?
小林 結局、作った耳たぶが厚すぎて、イヤリングはできなかったんです。同じ理由で、イヤホンもはまらず。でも、もともと耳たぶのあった左耳も小耳症で形も普通とは違うため、AirPodsみたいなシリコン型のやつは入らないから、ヘッドフォンを使ってます。
それでも、耳を作ったことでマスクをかけられるようになったし、眼鏡もできました。寝る時、枕に耳が当たるのが不思議で、「皆こんな感じで寝てるんやな」って、ワクワクしました。




