「口唇口蓋裂のポジションが分からないというか、肩身が狭い気持ちはずっとあります」

――口唇口蓋裂という“見た目”に関する病気ということで、命にかかわる病気より軽く扱われることもありましたか。

小林 口唇口蓋裂のポジションが分からないというか、肩身が狭い気持ちはずっとあります。

 私はずっと口唇口蓋裂で悩み続けてきたけど、世の中には命に関わる重篤な病気の人や障害を持つ人もいて。その中で、手術を重ねて機能面が改善していってる自分が、今置かれた環境の中で悩むのはただのエゴなのかなとか……。

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――改善したといっても、悩みはつきないわけで。

小林 恋愛に踏み出せなかったり、仕事選びに悩んだり、子どもを作るのを躊躇したり……見た目が良くなったとしても、やっぱりその都度、ライフステージに応じた悩みが出てきて。

 正直、病気じゃなくても、家庭環境とか仕事とか、何かしら悩んでいる人はいるわけで、それが命に直結するかどうかにかかわらず、自分の悩みを軽く扱われたくないと思うんです。

 でも、私も学生時代、ニキビで悩んでる子がいた時、「ニキビなんてすぐ治るやん。私のこの傷なんか治らへんで」って思っちゃってたわけで。こういうことをずっとグルグル考え続けているので、口唇口蓋裂って疲れるな、と日々思ってます(笑)。

――最近、SNSで障害者や外国人といったマイノリティへの差別やバッシングが見受けられます。当事者として、社会の変化を感じることはありますか?

小林 当事者の間でいうと、口唇口蓋裂に対する認識が多様になってきたなと思っていて。

 私は聴覚障害と口唇口蓋裂による言語障害があるので障害者手帳を持っていることもあり、私の口唇口蓋裂はどちらかというと障害の部類に当たるんです。でも、人によっては「病気」と捉えている人もいるし、中には、「口が割れた状態で生まれただけで、治療をすれば障害でも病気でもない」という人もいて。

 当事者の中で多様な解釈がある一方で、社会全体から見ると、まだまだ「口唇口蓋裂」という病名自体が知られていないと思うので、そこはもっと自分からアプローチしていきたいなと。

 ただ、昔よりは口唇口蓋裂に対する偏見は減ってきたし、差別は少なくなってきたと思います。

――偏見や差別が少なくなってきた要因として思い当たることはありますか。

小林 綾野剛さんが主演した『コウノドリ』というドラマで口唇口蓋裂を扱った回があって(2015年放送)、それでかなり認知が広がったと思います。

 それまでは、街を歩いている時によくない感情で見られていたのが、「どっかで見たことある病気やな」と思うのか、あんまり振り向かれなくなったというのは、私自身が肌で感じています。

 他の当事者のお話を聞くと、「病気を理由に就職できなかった」というエピソードが減少傾向にありますね。あと、保育園や幼稚園で入園拒否されていたのが、「説明すれば理解してもらえるようになった」といった変化が起きています。