今の課題は、本当に悩んで苦しんでいる方たちとつながること
――口唇口蓋裂当事者の方の悩みに対して、今求められている支援は何でしょうか。
小林 主催しているNPO法人で定期的に患者会をやってるんですけど、そこに来てくださる方は治療や情報収集に前向きな方が多いんですね。
逆に、本当に今悩んで苦しんでいる方は、患者会までアクセスできない。なので、そういう方たちを支援につなげることが今まさに課題で。私もいろんなツールで発信を続けて、つながってもらえるようにしたいなと思っています。
――当事者の方からDMで小林さんに直接、相談がくることも?
小林 今は季節の変わり目なので、「口唇口蓋裂が嫌で自殺したい」っていうメールが多いです。
口唇口蓋裂のことで悩んでうつ病を発症してしまうと、うつ病の症状でさらに口唇口蓋裂の悩みを深くしてしまう悪循環に陥る方が多いんですけど、皆さん、「自分の心が弱いせい」と思っているんですね。
なので、「今は季節の変わり目やし、女性やとホルモンバランスもあるし、とにかく口唇口蓋裂で悩んでいる自分を解放してあげられる何かを探していこう」と声掛けしています。
――小林さんのSNSには、親友でトリーチャーコリンズ症候群の山川記代香(きよか)さんが度々登場します。小林さん自身の悩みを山川さんに相談することも?
小林 お互い見た目の病気ということでそういう話をするイメージを持たれるんですけど、実際は普通の女子トークばっかりで、病気の話って全然しないんですよ。唯一するとしたら、お互い補聴器を使っているので、「補聴器の電池のもちが悪いよね」くらいかな(笑)。
私自身、初めてきよちゃんを見た時、正直ビックリしてしまったんですね。たまにフッときよちゃんが、「一緒に歩いているとき、私がマスクをしていないことで、いろんな視線を受けるよね。せっかくの楽しい時間なのに、嫌な気分にさせてたらごめんね」みたいなことを言うことがあって。でも私は、そんな視線もまったく気にならないし、今はきよちゃんの顔を見ても何も思わないです。
「“ポジティブでいたい”と願うネガティブな自分」を丸ごと受け止めていきたい
――かつては写真を撮られることも嫌だったそうですが、今ではこうして積極的にメディアで発信されています。
小林 今でも、自分の顔や声を聞いたり見たりするのは嫌ですよ。昔は、同じ口唇口蓋裂の方を見るのも嫌でした。いわゆる、同族嫌悪でした。でも今は同じ口唇口蓋裂の方を見ると、「仲間だ!」と嬉しくなります。
自分の姿を通して誰かが一歩踏み出せるきっかけになれたらいいなと思って活動しているので、自分がどうこうというのはいったん置いておこうと思って。そこからは吹っ切れるようになったかな。いや、でも、日々揺り戻しですね(笑)。
――そうなんですね。
小林 自分がいつか子どもを持つとしたら、口唇口蓋裂以外にも様々な疾患を持って生まれたので、慎重に妊活すると思うんです。計画妊娠して、遺伝子カウンセリングもするし、葉酸もちゃんと摂るぞとかって色々考えるわけなんですけど、一方で、口唇口蓋裂の遺伝率など発症に関する話を耳にすると、自分が否定されたような気持ちになるという(笑)。
だから今は、「“ポジティブでいたい”と願うネガティブな自分」を丸ごと受け止めていきたいなと思ってるんです。
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