「口唇口蓋裂」とその合併症等によって鼻と唇、耳がなく、心臓に3つ穴が開いた状態で生まれた小林えみかさん(31)。これまでに20回以上手術を受け、現在は口唇口蓋裂の当事者・家族支援を行うNPO法人の代表を務める。
日本に口唇口蓋裂の患者は500人に1人いるとされ、決して珍しい病気ではないが、いまだに差別や偏見もあるという。そんな社会を変えたいと活動する小林さんに、“見た目”や治療に苦しんだ半生について聞いた。(全4回の3回目/続きを読む)
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しんどくなる瞬間が積み重なって、不登校に
――ブログに、「口から鼻毛が生えてきた」と書かれていたのを読んだんですけど、まだその鼻毛は健在?
小林えみかさん(以下、小林) あります。面白くてそのままにしてます。
――口の中の鼻毛も生まれつきですか?
小林 じゃなくて、口唇口蓋裂の手術で唇を作った時、周辺の皮膚を引っ張って唇を閉じたので、本来、鼻の粘膜になるはずだった部分がちょうど口の中にきちゃったみたいで、それで口の中から毛が生えたみたいです。
――口唇口蓋裂の手術では“あるある”なんでしょうか?
小林 いや、珍しいかもですね。抜糸する時、主治医が鼻毛を糸やと思ってメッチャ引っ張ってきたんで、「それ鼻毛なんで、そのまま置いといてください」って言いました(笑)。
――今ではこうして口唇口蓋裂の情報発信をされている小林さんですが、中学校2年生の時に不登校になった経験があるとのこと。何かきっかけがあったのでしょうか。
小林 「お前アホやな」くらいのテンションで、男子から「かわいくないよな」みたいに会話の中でディスられることがよくあったんですけど、自分の中ではそれがグサグサ刺さって。
いじめとか決定的な何かがあったわけではないんですけど、こういう感じのちょっとしんどくなる瞬間が積み重なって、そこに耐えられなくなってしまったんです。
――小林さんに対する対応が他の子と違うと感じることも?
小林 やっぱり、“病気の子”として見られてるなっていうのはすごく感じました。
隣の子には笑ってしゃべるのに、自分が話しかけるとどこか遠慮して、「ああ、うん、そうやな。でさ~」って、すぐ他の友だちに話を振る、みたいな。あんまり私と関わりたくないんやろうな、というのをすごく感じたので、それがしんどかったです。
最終的には対人恐怖症みたいになってしまって、人に会うのが怖いし、学校の門を見るだけでも吐き気がして、中3まで門を越えることができず。結局、卒業式が終わった後の校長室で卒業証書をもらって卒業しました。




