害虫を火炎放射器で焼き払うケースは東京湾でも
自衛隊による駆除活動は獣に留まらない。過去には虫相手にも出動している。
1961年9月、徳島県鳴門市で害虫のハスモンヨトウが異常発生し、その被害は約370ヘクタールに及んだ。ハスモンヨトウは広範な植物を食する農業害虫で、名前が示す通り、夜盗、つまり夜に食害を行い、昼は葉裏等に隠れている。
冬眠しないので寒冷地では越冬できないが、老齢幼虫は殺虫剤に対する感受性が低下するという厄介な性質を持っており、農家による農薬散布でも解決をみなかった。
そのため、10月には鳴門市助役が上京し、農林省(当時)に駆除への国の援助の陳情が行われた他、資金難で農薬散布ができなかった堤防と防潮林の雑草を火炎放射器で焼き払うよう自衛隊に要請が行われた。
10月19日朝、91名の隊員が火炎放射器4基を用いて焼却を開始した。堤防の2ヶ所には事前にガソリンとゲル化剤が撒かれており、それに火炎放射器で着火していった。自衛隊による焼却作業は21日まで行われている。
こうした火炎放射器を用いた活動は他にも行われている。東京湾の埋立地、夢の島で大量発生したハエの駆除作戦では、東京消防庁を主力として自衛隊も参加し火炎放射器、ナパーム地雷を投入している。また、日本住血吸虫の中間宿主であるミヤイリガイ駆除のため、千葉県の利根川河川敷で火炎放射器を用いたミヤイリガイ駆除も実施されている。
これまでみてきたように、獣害・虫害対策を目的とした自衛隊派遣は数多く行われてきたが、その活動形態は様々であり、また法的な根拠、名目上の活動も異なっている。
今回の秋田県への派遣でも、法的にどういった活動ができるかが問題視されている。そこで、次章では現行法で自衛隊はどのような活動ができるかといったことなどを法学者に伺ってみた。
