日本各地でクマの出没、人身被害が相次いでいる中、秋田県の鈴木健太知事が自衛隊の派遣を要請したことが大きく報じられている。小泉進次郎防衛相も理解を示し、秋田県に5日より自衛隊が派遣されている。

小泉進次郎防衛大臣 ©文藝春秋

 SNS上では自衛隊によるクマ駆除を求める向きもあるが、自衛隊が公共工事を行う際の根拠法である自衛隊法100条をクマ対策にも適用し、後方支援に従事するとしている。

 自衛隊の歴史を振り返ると、これまでにもクマや虫による獣害・虫害といった動物被害に対して出動した例は数多く存在し、原因となった動物や出動形態も様々なものがあった。しかし、ほとんどの事例が1950年代から70年代と古いこと、自衛隊が記録をほとんど残しておらず僅かな記録も分散していること、マスコミによる報道自体も限られていたこと等、様々な事情により、自衛隊内やマスコミでもほとんど知られていない。

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クマに対して自衛隊が出動したのは過去に8ケース

 筆者はこれまで、そうした自衛隊の出動事例の収集を行ってきた。本稿では、今回の自衛隊派遣を考える上での一助とするため、過去に自衛隊が行ってきた獣害・虫害への派遣活動をみていきたい。なお、前述した理由から断片的、はっきりしない記述もあるが、その点はご容赦頂きたい。

自衛隊のクマに対する出動の一覧(筆者調べ)

 熊害で自衛隊が派遣された例について、筆者の調べでは1960年代に北海道から東北にかけて8件ある。最も古いものは、1961年9月の海上自衛隊函館基地隊によるもので、北海道松前地方でクマによる農作物の被害を受けた地元の要請で、自衛隊員3名と猟銃5丁が5日間出動したと『自衛隊年鑑』にある。

 猟銃が出ていたことから、駆除に関わった可能性もあるかもしれないが、活動の詳細やどのような根拠法による派遣かは定かではない(災害対策基本法の施行は1962年7月10日である)。