――熊害に対する自衛隊の災害派遣は可能ということですね。では、どのような判断で派遣がなされるのですか?
横田 災害派遣の要件(83条1項・2項)にある「事態やむを得ないと認める場合」の判断基準として、次の災害派遣の3要件があります。
1. 緊急性(状況からみて差し迫った必要性があること)
2. 公共性(公共の秩序を維持する観点において妥当性があること)
3. 非代替性(自衛隊の部隊等が派遣される以外に適切な手段がないこと)
防衛省はこれらを総合的に勘案して判断するものと説明しており、緊急的・一時的な支援であるとしている点は覚えておくべきですね。
武器の使用には細かなルールがあるが…
――派遣された場合、法的に制約がかかる部分(武器使用等)はありますでしょうか?
横田 自衛隊は、確かに任務遂行に必要な武器を保有することができます(自衛隊法87条)。しかし、その使用にあたっては、細かく要件が定義されており、それは前述した出動根拠規定によって場合分けされています。
まず、防衛出動(76条1項)の場合は、「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」(88条1項)とされますが、その範囲は「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」(同2項)とされています。
治安出動(78条1項・81条2項)の場合は、警察官職務執行法(警職法)の規定が準用されることになります。これは、限定のない準用であり、警職法7条の武器使用も含まれています。さらに、90条において、武器使用ができる場合が次のように3点追加されています。
一 職務上警護する人、施設又は物件が暴行又は侵害を受け、又は受けようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がない場合
二 多衆集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
三 前号に掲げる場合のほか、小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持し、又は所持していると疑うに足りる相当の理由のある者が暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
