だが、老女がその恩恵にあずかるとは限らない。なにより超熟女を好む男性がいることは理解している。だとしても、老女は都会で暮らしていけるだけの実入りが得られているとは到底思えない。
僕のように売春婦だと理解してのことならまだしも、そもそもうずくまっての客待ちでは交渉のテーブルにすらつけないのではないか。見た目からして無視か哀れみの目を向けるのが関の山で、普通はそこまで飛躍はしない。むろん、僕が秘めていたのも下心ではなく同情心である。
この地を買春目的で訪れる好事家たちのなかでは名物立ちんぼとして知られる老女の存在は、1ヶ月前、この地の事情にめっぽう詳しいライターの仙頭正教から教えてもらった。僕が接触したのは朝9時ごろのことだ。
「何をしてるんですか?」
正直に言おう。仙頭からのお墨付きがあっても、僕はまだホームレスではないのかと思っていた。だから普通は「遊べるの?」と声をかけるところ、こんな問いかけになった。
すると、「えっ、はい、ホテルですか?」と言って、老女は満面の笑みを浮かべた。
3000円でカラダを売る老女
5千円、いや3千円でもと売春の交渉をしてきた老女に、たった3千円でカラダを売ることに軽く動揺しつつ、代わりにホテルでのインタビューと写真撮影を了承してもらう。こちらの意図を聞かずに売値を提示してくるとは老女もなかなか手際がいい。普通は立ってもいない老女に買春交渉などするはずもないのに、である。
本人にその気はないのかもしれない。しかし周囲と異なるスタイルで客待ちすることが注目を集め、ときには僕のように同情を誘い、ひいては声かけすることになり売春は成約。そうして新規客を獲得していること、その積み重ねで常連客を獲得して糊口を凌いでいることが後々、わかってくるのだ。
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