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いそいそと風呂場へ行こうとする彼女を制止して…
それは奇妙な時間だった。「見えないですね」とお世辞とも皮肉ともとれる言葉を続けた僕に対して久美さんは、「本当はもう少し上」とはぐらかすだけで、サバを読んだことへの言い訳もしない。若さで負けたくない。自分の年齢を認めたくない。心理はいくつも想像されるが、いまさら実年齢を知って逃げ出すはずもないのに「本当はいくつなんですか?」と話をふっても苦笑するだけだ。
「そろそろ頃合いですね」と言い、久美さんが僕を風呂場へ誘う。
いつもはデリヘルのマニュアルにあるように客の体を洗ってあげているのだという。久美さんがフリーの立ちんぼ経験しかないとするならば、この段階で買春客に対するもてなしなどしないのではないか。
いそいそと風呂場へ行こうとする久美さんを制止して、目的はあくまで取材であることを伝える。改めて久美さんの話を聞こう。
