「なんで馬が1面なんだよ」
かぐら もともと私は野球が大好きで、スポーツ新聞を買って読むような中高生でした。桜蔭は球場のすぐそばに学校があるので、高校時代は学校帰りに後楽園球場で選手入場を見て家路につくような、ちょっと変わった子で(笑)。
場外馬券場もすぐそばにありましたが、当時は競馬にはまったく興味がなくて、スポーツ新聞の1面にミスターシービーとかシンボリルドルフが載っているのを見て、「なんで馬が1面なんだよ」と内心思っていたんです。
けれど大学に入学して、ソフトボールサークルに入ってから、周囲に競馬好きの友だちが増えていって。それで現地に観戦に行ったのが競馬との出会いでしたね。
――そこから武豊騎手に惹かれるようになったとのことですが、初めて生で武豊騎手を見たときのことを覚えていますか。
かぐら 1988年の日本ダービーですね。「あぁ、武豊騎手だ」と感慨深かったです。おっとりとした雰囲気のなかで、眼光は鋭いなと感じたことを覚えています。特に、パドックにいるときの武豊騎手の目力が強かったです。
――印象的なレースはありますか。
かぐら 2013年の毎日杯です。3年前の同レースでの落馬事故以来、思うように結果を残せなかった武豊騎手が、キズナ号に騎乗して勝ったレースですね。現地、阪神競馬場のウイナーズサークル前で観戦していたのですが、当時のレースの詳しい状況は思い出せないほど興奮していました。ひたすら「差してー!」というような声援を送っていた記憶だけはあります。
レース後は込み上げるものがあって、嗚咽してしまいました。周囲からは笑われたのですが、自分の感情を抑えることができなかったですね。表彰式までずっと泣いていて。ただ、友だちに「武豊騎手に笑われるよ」といわれて、ハッと涙が引っ込みました。
いろいろと海外重賞も観に行くのですが、正直、2013年の毎日杯を超える感動はなかなかないですね。

