「精神科に通院していた時期もありました」漫画で自分のトラウマや罪悪感などを深掘りした“影響”
――描いているのが辛くなることも……?
宮川 原稿が忙しかったことも重なって、精神科に通院していた時期もありました。不眠の症状が出たり、すごく細かいこと、例えば長袖の袖口が机に擦れる感覚が嫌で嫌で「うわーっ」となっちゃったり。
もちろん「自分が被害者なんだ」とかは思っていなくて、単純に自分で火に飛び込んでいって火傷をしたような感じなんですけど。
長男のことを漫画に描くにあたって、僕が幼少期の頃のことなどははっきり覚えていないので、7歳上の次男に色々と取材というか、教えてもらうことも多くて。
そうすると、僕が知らなかった家族の一面が見えてくるんですね。次男からすれば、あの家は「地獄」そのものだったと。
――ご自身としては、知りたくなかったこともあるのでしょうか?
宮川 難しいですね。知らないことを知っていくというのは、頭の中を弄られているような気持ち悪さがあるんですけど、僕の場合は、自分の知らないことを知る面白さが勝ってしまう部分もあって。
それでも、自分のトラウマや罪悪感などを深掘りした『名前のない病気』2巻の内容を描いていた時は、本当にしんどかったです。
「お前が思っているような幸せな家庭じゃないから、知らんままの方がええ」
――長男さんは、今回の漫画で自分のことが描かれているのを知っているのですか?
宮川 連載前に「家族のことを描くからね」というのは話していて、雑誌はおそらく読んでないと思いますが、単行本で読んでいるみたいです。この間も「おい、本屋でお前の漫画が並んでたぞ」と電話があって。
それも「見たぞ」くらいのことしか言わなかったんです。ドキッとはしたんですけど。今のところ「描くな」みたいな話も特になく。
――反対されているわけではないんですね。次男さんは、長男さんを漫画で描くことについてどう思っているのでしょうか?
宮川 次男からは、最初「やめとけ」と言われたんですよ。「お前が思っているような幸せな家庭じゃないから、知らんままの方がええから」と。
次男は次男で、あの家庭の記憶がすごく辛いこともありますし、幼かった僕のためを思って胸に留めておいてくれたこともたくさんあったんじゃないかと。
――実際に連載が始まった今、次男さんはそれを読んでいるのでしょうか?
宮川 めちゃくちゃ追いかけてくれていて、全部チェックしてくれてます。今はノリノリで、この間会ったときなんかは「お前は令和の太宰治か!?」と絶賛してくれました(笑)。
