大谷が「大手製」ではないバットを選んだ背景
学生野球の経験者であり、社会人野球のリクルートやローソンといったチームを指導した宇野さんの本業はキャリアコンサルタント。そんな彼がチャンドラーの代理店を始めたのは2021年のこと。もちろんその後、大谷が同社のバットを手にタイトルを獲得する未来が訪れようとは知る由もありません。
チャンドラーの代理店になった経緯を、宇野さんは次のように語ります。
「実は知り合い経由で、当時千葉ロッテに所属していたレオネス・マーティンが、『アメリカ時代に慣れ親しんだチャンドラーのバットを使いたいけど、NPB(日本野球機構)に認可されていない』と困っているのを知ったんです。そこからチャンドラーの日本での代理店を始めることになりました」
宇野さんがNPBに申請し、チャンドラーがNPB公認のバットメーカーに加わると、宇野さんのもとにかつてチャンドラーを愛用していたタイラー・オースティン(横浜DeNA)やアリエル・マルティネス(北海道日本ハム)といった外国人を中心に、20人ほどからオーダーが。そして2年後、時代の寵児、大谷が手にしたことで話題になると、日本人選手も興味を示すようになり、約60人から注文が入りました。
「私はチャンドラー社のスタッフではなく、同社もほとんど情報を出していないので推測するしかありませんが」と宇野さんは前置きした上で、大谷がチャンドラーのバットを使い始めた経緯について聞かせてくれました。
「大谷選手は2023年にニューバランスと契約を結びましたが、ニューバランスはバットをつくっていないので、アシックスと契約していたころとは異なり、特定のメーカーのバットを使わなければいけないという縛りはありませんでした。そこで彼は、自らが納得できるバットを探したのだと思います」
そこで出会ったのがチャンドラーのバット。しかしチャンドラーは、メジャーでもシェア5位と決して大手のメーカーというわけではありません。ではなぜ、大谷はチャンドラーを手に取ったのか。そこには、ある大物スラッガーの存在があるはずだと宇野さんは睨んでいます。
